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夏でもインフルエンザになる人が増えています。東中野で寒気や高熱ならいたや内科

2026.08.18

「インフルエンザは冬の病気」と思われがちですが、東京都の定点当たり報告数は2026年6月中旬の0.06から8月上旬の0.84へ増えています。なぜ夏でも感染が起こるのかを、季節性のしくみからウイルスが細胞に入りこむ分子レベルの過程、寒気と高熱がつくられるしくみまで、東中野の内科クリニックが論文と図解で解説します。熱中症との見分け方、検査と抗ウイルス薬のタイミングもご案内します。

【目次】
東中野の内科クリニックでも、夏にインフルエンザが見つかっています
数字で見る、2026年夏の東京
インフルエンザは「冬だけの病気」ではありません
なぜ「冬」に流行しやすいのか — 湿度と温度の話
2026年の夏に報告数が増えている4つの背景
ウイルスが細胞に入りこむまで(分子レベル)
増えて出ていくまで、そして薬が効く場所
「寒気」と「高熱」がつくられるしくみ
夏の高熱で間違えやすい5つの病気
検査と薬の「ちょうどよいタイミング」
夏のインフルエンザを防ぐために
東中野で受診するかどうかの目安
よくあるご質問
まとめ
参考文献

 

東中野の内科クリニックでも、夏にインフルエンザが見つかっています

「真夏に、急に寒気がして39℃出ました」。「夏バテだと思って寝ていたら、関節が痛くて動けなくなった」。「熱中症かと思って冷やしていたけれど、よくならない」。この8月、東中野のクリニックでこうしたご相談が続いています。

そして、検査をするとインフルエンザが陽性になる方がいらっしゃいます。多くの方が驚かれます。「インフルエンザは冬の病気」だと思われているからです。

ですが、東京都の統計を見ると、この夏のインフルエンザの報告数は、6月下旬から8月にかけてはっきりと増えています。数としては冬の流行期とは比べものになりませんが、「夏だからインフルエンザではない」とは言えない状況です。

この記事では、東中野の内科クリニックとして、なぜ夏でもインフルエンザになるのかを、正確にお伝えします。まず実際のデータを見て、次に「そもそもなぜ冬に流行するのか」という季節性の理由を確かめ、そのうえでウイルスが細胞に入りこむところ、寒気と高熱がつくられるところまで、分子のレベルで図を使いながら解説します。最後に、熱中症や夏かぜとの見分け方、検査と薬のタイミング、受診の目安をご案内します。

結論を先にお伝えすると、大切なポイントは3つです。①夏でもインフルエンザは起こる。②「急な寒気→数時間で高熱→関節の痛み」はインフルエンザらしい立ち上がり。③検査は早すぎると陰性に出るが、薬は48時間を過ぎると効きにくい。この3つを知っているだけで、動き方が変わります。

夏でもインフルエンザになる人が増えています。東中野で寒気や高熱ならいたや内科

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数字で見る、2026年夏の東京

まず、印象ではなく数字を見てください。感染症の流行状況は、決められた医療機関(定点医療機関)から毎週報告される「定点当たり報告数」で把握されています。東京都には419か所のインフルエンザ定点医療機関があります。

東京都のインフルエンザ定点当たり報告数の推移(2026年第25〜32週)

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2026年第32週(8月3日〜9日)の東京都の報告は定点当たり0.84でした。6月中旬(第25週・第26週)は0.06でしたから、1か月半でおよそ14倍になった計算です。第31週の0.72からも増えています。

さらに、流行開始の目安とされる「定点当たり1.0」を、都内の6つの保健所管内がすでに超えています(第31週は7保健所)。冬の流行期には40〜70という値になりますから、絶対数としてはまだ小さい。けれども、方向としては明らかに増えているというのが、いまの東京の状況です(東京都感染症情報センター「インフルエンザの流行状況(東京都 2025-2026年シーズン)」)。

なお、亜熱帯にあたる沖縄県では、この夏もインフルエンザの報告が本州より高い水準で推移しています(沖縄県感染症情報センター)。これは今年に限った話ではありません。次の章で説明します。


インフルエンザは「冬だけの病気」ではありません

「インフルエンザ=冬」というイメージは、日本の本州のような温帯に住んでいるからこそ成り立つものです。世界を見渡すと、流行の形は緯度によってまったく違います。

温帯・熱帯・亜熱帯におけるインフルエンザの季節性の違い

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  • 温帯(東京など):冬に鋭いピークが1回。夏は「ゼロ」ではなく「少ないだけ」です。
  • 熱帯(東南アジアなど):年間を通じて流行があり、雨季にピークが来る地域もあります。はっきりした流行期を持たない地域もあります。
  • 亜熱帯(沖縄):冬だけでなく、夏にも毎年のように流行が起こります。

世界のインフルエンザの季節性をまとめた研究では、温帯では冬に集中する一方、熱帯・亜熱帯では通年性、あるいは雨季に流行するパターンが確認されていますTamerius J, et al. Global influenza seasonality: reconciling patterns across temperate and tropical regions. Environ Health Perspect. 2011Tamerius JD, et al. Environmental predictors of seasonal influenza epidemics across temperate and tropical climates. PLoS Pathog. 2013)。

日本国内でも、沖縄では夏の流行が長年観察されてきました。琉球大学のグループが那覇地域の7年半分の検査結果を解析した研究では、沖縄では夏にもほぼ毎年流行が起こり、そこではB型インフルエンザが大きな役割を果たしていることが報告されています(Sunagawa S, et al. An Epidemiological Analysis of Summer Influenza Epidemics in Okinawa. Intern Med. 2016)。

つまり、「冬に流行する」ことはインフルエンザウイルスの本質ではありません。ウイルスは一年中どこかで人から人へ回っています。温帯で冬に集中するのは、気温・湿度・人の行動という条件がそろうからです。逆に言えば、条件が部分的にそろえば、夏でも感染は成立します。


なぜ「冬」に流行しやすいのか — 湿度と温度の話

では、その「条件」とは何でしょうか。ここは実験でかなり詳しく調べられています。

低温・低湿度がインフルエンザの感染を成立しやすくする3つの理由

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①ウイルスが長生きする。モルモットを使った実験で、低温・低湿度の条件ほどインフルエンザの伝播が起こりやすいことが示されました。5℃では20℃より伝播が効率的で、湿度が低いほど伝播しやすかったのです(Lowen AC, et al. Influenza virus transmission is dependent on relative humidity and temperature. PLoS Pathog. 2007)。

②飛沫が小さく軽くなる。乾いた空気の中では、せきやくしゃみで飛んだしぶきから水分が抜け、小さな粒子になって空中を長く漂います。実際、屋内の空気中に浮かぶインフルエンザウイルスの感染力は、湿度が上がると低下することが室内実験で示されています(Yang W, et al. Dynamics of airborne influenza A viruses indoors and dependence on humidity. PLoS One. 2011)。

さらに、米国の統計を用いた解析では、気温そのものより「絶対湿度」がインフルエンザの流行開始とよく対応することが報告されています(Shaman J, Kohn M. Absolute humidity modulates influenza survival, transmission, and seasonality. PNAS. 2009)。

③気道の防御が落ちる。鼻やのどの表面は粘液におおわれ、その下の細胞から生えた線毛が、異物を波打つように外へ運び出しています。空気が乾くと粘液が濃くなり、この「ベルトコンベア」が動きにくくなります。入り口の守りが弱くなるわけです。

ここで、冷房の効いた部屋を思い浮かべてください。エアコンは空気を冷やす過程で水分を奪うため、室内の湿度は下がります。暑いので窓は閉め切り、換気も不足しがちです。つまり、夏の室内では、冬と似た条件が部分的に再現されているのです。これが、夏でも感染が成立する物理的な理由のひとつです。


2026年の夏に報告数が増えている4つの背景

今年の夏に報告が増えている理由は、ひとつではありません。次の4つが重なっていると考えられます。

2026年夏にインフルエンザの報告数が増えている4つの背景

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①冷房した密閉空間。前の章で説明したとおりです。夏は「暑いから屋内にいる」季節でもあり、人が集まる室内で過ごす時間はむしろ長くなります。

②人の移動。夏休み、帰省、旅行、そして海外からの往来。通年で流行がある地域とやりとりがあれば、ウイルスは季節に関係なく入ってきます。沖縄や東南アジアからの持ち込みは、夏の症例では常に考えるべき要素です。

③免疫が薄れる。前シーズンに感染した方や、ワクチンを接種した方の免疫は、時間とともに低下します。ワクチンの効果がシーズン中にも徐々に落ちていくこと(intraseason waning)は複数の研究で報告されています(Ferdinands JM, et al. Intraseason Waning of Influenza Vaccine Effectiveness. Clin Infect Dis. 2019)。昨秋に接種した方の防御力は、8月にはかなり弱くなっています。

④前シーズンの余波。2025-2026年シーズンの東京は、記録的な流行でした。2025年10月2日に流行シーズン入りし、10月30日に注意報基準、11月13日に警報基準を超え、いったん下がった後に2026年1月29日に再び注意報、2月5日に再び警報基準を超えました。ひとつのシーズンで2回警報が出るのは異例です。これだけ大きな流行の後では、ウイルスが完全には消えず、夏まで低いレベルで残ることがあります。


ウイルスが細胞に入りこむまで(分子レベル)

ここからは、体の中で何が起きているのかを見ていきます。少し専門的になりますが、「なぜ薬は早く飲まないと効かないのか」「なぜ検査は早すぎると陰性なのか」がここで腑に落ちるはずです。

インフルエンザウイルスがα2,6結合シアル酸に結合して細胞に侵入するまで

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インフルエンザウイルスの表面には、HA(ヘマグルチニン)というトゲのようなタンパク質が生えています。ウイルスはこのHAを使って、細胞の表面から生えている糖の枝の先端、シアル酸にくっつきます。

ここが重要なところです。シアル酸には、糖鎖へのつながり方の違いでα2,6結合α2,3結合があります。ヒトのインフルエンザウイルスはα2,6結合を好み、これはヒトの鼻・のど・気管の細胞にたくさんあります。だからヒトのインフルエンザは、まず上気道で増え始め、のどの痛みやせきから始まるのです。一方、鳥のインフルエンザウイルスが好むα2,3結合はヒトの上気道には少なく、これが鳥インフルエンザがヒトからヒトへ広がりにくい理由のひとつになっています(Wilson IA, et al. Hemagglutinin Structure and Activities. Cold Spring Harb Perspect Med. 2021)。

次の段階も、ウイルス単独では進みません。HAは最初「HA0」というつながった状態で作られ、細胞側の酵素(TMPRSS2など、トリプシン様プロテアーゼ)に切られてHA1とHA2に分かれてはじめて、膜を融合させる力を持ちます。切られないウイルスは細胞にくっついても中に入れません。つまりウイルスは、感染するのに宿主のハサミを借りているのです(Edinger TO, et al. Influenza virus entry. Adv Exp Med Biol. 2012)。

くっついたウイルスは、細胞膜がくぼんで小胞ごと細胞の中へ取りこまれます(エンドサイトーシス)。この小胞の中は次第に酸性になり、pHが5前後まで下がるとHA2が大きく形を変え、小胞の膜とウイルスの膜を融合させます。同時に、ウイルスの膜にあるM2という小さなイオンチャネルが水素イオンを内部に通し、粒子の中身をゆるめます。こうして8本に分かれたウイルスのRNAが細胞の中に放り出され、核へ運ばれていきます。


増えて出ていくまで、そして薬が効く場所

核に入ったウイルスのRNAは、ここから一気に増えます。そして、インフルエンザの薬はこの「増える工程」のどこかを止める薬です。壊れた細胞を治す薬でも、ウイルスを直接殺す薬でもありません。

インフルエンザウイルスの複製過程と、抗インフルエンザ薬が作用する場所

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面白いのは②の段階です。インフルエンザウイルスは、自分のmRNAに付ける「帽子」(キャップ構造)を自前で作れません。そこで細胞のmRNAからキャップを奪います。PB2というタンパク質が細胞のmRNAのキャップをつかみ、PAというハサミ(キャップ依存性エンドヌクレアーゼ)がその少し先を切断して、自分のコピーの出発点として使うのです。この行儀の悪い仕組みを「キャップ・スナッチング」と呼びます。

バロキサビル(ゾフルーザ)は、このPAのハサミをふさぐ薬です。コピーの開始そのものを止めるので、1回の内服で効きます(Hayden FG, et al. Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents. N Engl J Med. 2018)。

もうひとつが最後の段階です。新しくできたウイルス粒子は細胞の膜をかぶって外に出ますが、そのままでは自分がくっついたシアル酸に引っかかって離れられません。そこでNA(ノイラミニダーゼ)がシアル酸を切り、粒子を切り離します。オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、ペラミビル(ラピアクタ)は、このNAを止める薬です。粒子が細胞から離れられなければ、隣の細胞へ広がっていけません。

ここまで読んでいただくと、なぜ「早く飲むほど効く」のかが分かると思います。どちらの薬も、すでに壊れた細胞を元に戻すことはできません。ウイルスが増えきってしまった後では、止めるものが残っていないのです。厚生労働省も、発症から48時間以内に開始すれば発熱期間は通常1〜2日短縮するが、48時間を過ぎてからの開始では十分な効果は期待できないと説明しています(厚生労働省「インフルエンザについて(令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A)」)。


「寒気」と「高熱」がつくられるしくみ

ここで、多くの方が誤解されている点をお伝えします。インフルエンザのつらさは、ウイルスが毒を出しているから起こるのではありません。体が戦うために、自分で起こしている反応です。

RIG-Iからサイトカイン、PGE2、視索前野へ — 発熱と悪寒が起こるしくみ

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順番に見ていきます。まず、細胞の中にあるRIG-Iというセンサーが、ウイルスのRNAが持つ特徴的な構造を見つけて「侵入された」と判定します。次に、I型インターフェロンと、IL-1β・IL-6・TNF-αといった物質(サイトカイン)が放出されます。これらは体温を上げる働きを持つため「内因性発熱物質」と呼ばれます。

これらのサイトカインが脳に届くと、脳の血管の内側を覆う細胞(血管内皮細胞)でCOX-2という酵素が働き、プロスタグランジンE2(PGE2)が作られます。ここが発熱のスイッチです。PGE2はEP3受容体を介して、体温を管理している視床下部の視索前野にはたらきかけ、「目標体温(セットポイント)」を引き上げますNakamura K. Neural Mechanisms of Inflammation-Induced Fever. Neuroscientist. 2018Inflammation-induced fever depends on prostaglandin E2 production by brain endothelial cells and EP3 receptors in the median preoptic nucleus. Acta Physiol. 2024)。

ここから先が、インフルエンザ特有の体験につながります。

先に来るのは「寒気」です。目標体温が39℃に設定された瞬間、実際の体温36.5℃は「低すぎる」と判定されます。体は慌てて熱をため込もうとして、皮膚の血管を締め(だから顔色が悪くなり手足が冷たくなります)、筋肉をふるわせて熱を作ります(ふるえ・悪寒戦慄)。熱があるのに寒く感じ、布団をかぶりたくなるのは、体が熱をつくっている真っ最中だからです。

遅れて来るのが「高熱と全身の痛み」です。サイトカインは全身をめぐり、筋肉や関節の痛み、強い倦怠感を引き起こします。実験的にヒトにインフルエンザを感染させた研究では、鼻腔のIL-6の量が発熱や症状の強さと対応していたことが報告されています(Kaiser L, et al. Symptom pathogenesis during acute influenza: interleukin-6 and other cytokine responses. J Med Virol. 2001)。「熱よりも、体じゅうが痛くて動けないのがつらい」とおっしゃる方が多いのは、このためです。

そして、この機序が分かると解熱鎮痛薬の位置づけもはっきりします。アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬は、PGE2の産生を抑えて「目標体温」を下げる薬です。つらさを軽くする薬であって、ウイルスを減らす薬ではありません。眠れない、水分がとれないというときには使ってよい薬ですが、熱が下がっても体の中では戦いが続いています。


夏の高熱で間違えやすい5つの病気

夏は、冬より「熱が出る原因」の選択肢が多い季節です。だからこそ、思い込みが危険になります。

インフルエンザ・熱中症・新型コロナ・夏かぜ・溶連菌の見分け方の比較表

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とくに気をつけていただきたいのが熱中症との取り違えです。方向は両方あります。

熱中症をインフルエンザと思い込むと、危険です。熱中症は、体温を決める脳のしくみ自体は正常なまま、放熱が追いつかずに体温が上がっている状態です。セットポイントは上がっていないので、解熱薬は効きません。ただちに涼しい場所で体を冷やし、水分と塩分を補う必要があります。意識がおかしければ救急要請です(環境省「熱中症環境保健マニュアル」)。

逆に、インフルエンザを熱中症だと思い込むのも問題です。「暑かったからだろう」と様子を見ているうちに、抗ウイルス薬が有効な48時間が過ぎてしまいます。

見分けの手がかりはいくつかあります。のどの痛みや鼻水などの「かぜ症状」があるか。関節痛・筋肉痛が強いか。周囲に同じ症状の人がいるか。涼しい場所で休んで改善するか。ただし、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザは症状だけでは区別できません。ここは検査で確認します。


検査と薬の「ちょうどよいタイミング」

「熱が出てすぐ病院へ行ったのに、検査が陰性だった。翌日また熱が出て、行き直したら陽性だった」。これはよくあることで、ミスではありません。時間の問題です。

インフルエンザの感染から発症、検査、抗ウイルス薬までの時間経過

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感染してから1〜2日の潜伏期間を経て、急に症状が出ます。迅速抗原検査は、のどや鼻のウイルス量がある程度たまってからでないと反応しません。そのため、発症してすぐの数時間は陰性に出やすいのです。

迅速抗原検査の精度をまとめたメタ解析では、感度はおよそ6割、特異度は約98%と報告されています(Chartrand C, et al. Accuracy of rapid influenza diagnostic tests: a meta-analysis. Ann Intern Med. 2012)。つまり「陽性なら、ほぼ間違いなくインフルエンザ」ですが、「陰性でも、インフルエンザではないとは言い切れない」ということです。当院では検査の結果だけでなく、症状の経過と、周囲でどんな感染症が流行しているかを合わせて判断しています。

実務的な目安としては、発症(急な寒気や高熱が始まった時点)から半日ほど経ってから、48時間以内に受診していただくのが、検査の精度と薬の効果の両方にとっていちばん良いタイミングです。ただし、呼吸が苦しい、水分がとれない、意識がおかしいというときは、時間を待たずに受診してください。

なお、ウイルスは発症前日から発症後3〜7日ほど排出されます。解熱とともに排出量は減りますが、解熱後も出続けます(厚生労働省)。熱が下がったからといって、その日から周囲に完全に安全とは限りません。


夏のインフルエンザを防ぐために

予防については、ひとつ、うれしい違いがあります。

この夏に流行している手足口病やヘルパンギーナのウイルス(エンテロウイルス)はエンベロープ(脂の膜)を持たないため、アルコール消毒が効きにくいという性質があります。ところが、インフルエンザウイルスはエンベロープを持っています。脂の膜はアルコールで壊れるので、インフルエンザに対してはアルコール手指消毒がしっかり効きます。

そのうえで、夏ならではの工夫を挙げます。

  • 手洗いとアルコール消毒:外出後、食事前、顔をさわる前に。夏は同時に夏かぜも流行しているので、石けんと流水の手洗いを基本にして、アルコールを併用するのが確実です。
  • 冷房と湿度:冷房は熱中症を防ぐために必要です。切るのではなく、湿度を50〜60%に保つ工夫(加湿器、洗濯物の室内干しなど)をしてください。乾いた空気はウイルスにとって有利です。
  • 換気:暑いと窓を閉め切りがちですが、短時間でも定期的に空気を入れ替えてください。
  • 体調管理:睡眠不足と脱水は防御力を下げます。夏は眠りが浅くなりやすいので、意識して休んでください。
  • ワクチン:インフルエンザワクチンの接種は例年10月から始まります。夏のいまは接種の時期ではありませんが、今シーズンの流行が早く始まる可能性を考えると、秋になったら早めにと考えておいてよいと思います。時期については当院にご相談ください。

東中野で受診するかどうかの目安

東中野でインフルエンザが疑われるときの受診の目安

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夏の発熱は「たぶん夏バテ」「暑さのせい」で片づけられがちです。ですが、急な寒気で始まり、関節や筋肉が痛くて動けないという経過は、夏バテの経過ではありません。

また、ご高齢の方、妊娠中の方、心臓・肺・腎臓の病気や糖尿病をお持ちの方は、インフルエンザが重症化しやすいことが分かっています。この場合は「様子を見る」より、早めにご相談ください。

お子さん・未成年の方については、もうひとつ注意点があります。インフルエンザにかかったとき、急に走り出す、部屋から飛び出そうとするといった異常行動が起こることがあります。厚生労働省は、抗インフルエンザ薬を使ったかどうかによらず、少なくとも発熱から2日間は、一人にしない・玄関や窓の施錠をするなど、転落等の事故を防ぐ対策をとるよう呼びかけています。


よくあるご質問

Q. 夏なのに、本当にインフルエンザなのですか?

A. あります。東京都の第32週(8月3日〜9日)の定点当たり報告数は0.84で、6月中旬の0.06から増加しています。都内の6保健所管内では、すでに流行開始の目安である1.0を超えています。数は冬より少ないものの、ゼロではありません。

Q. 熱中症とインフルエンザ、どう見分ければいいですか?

A. 手がかりは「かぜ症状があるか」です。のどの痛み、鼻水、せきがあればインフルエンザなどの感染症を考えます。熱中症では通常これらは出ません。また、涼しい場所で休んで水分をとると改善するのが熱中症、改善しないのが感染症という違いもあります。ただし迷ったら受診してください。熱中症に解熱薬は効きません。

Q. 熱が出てすぐ検査してもらえますか?

A. 検査自体はできますが、発症直後は陰性に出やすいことをご承知おきください。急ぐ理由がなければ、発症から半日ほど経ってからのほうが確実です。ただし、呼吸が苦しい、水分がとれない、持病があるなどの場合は、検査の精度より受診のほうが優先です。

Q. 検査が陰性でした。インフルエンザではないということですか?

A. 言い切れません。迅速抗原検査の感度はおよそ6割です。陽性ならほぼ確実ですが、陰性は「否定の根拠」にはなりません。症状と経過、周囲の流行状況を合わせて判断します。

Q. 薬は必ず飲まないといけませんか?

A. 健康な成人で症状が軽い場合、必ずしも必要ではありません。抗ウイルス薬が短縮する発熱期間は通常1〜2日です。一方、高齢の方、妊娠中の方、持病のある方、重症化のリスクがある方には積極的にお勧めしています。体の状態を診たうえでご提案します。

Q. 昨シーズンにワクチンを打ちました。まだ効いていますか?

A. 残念ながら、効果は時間とともに低下します。シーズン内でも効果が徐々に落ちることが報告されており、昨秋に接種した方の防御力は、8月にはかなり弱まっていると考えるのが妥当です。今シーズンの接種は秋からになります。

Q. 熱が下がったら、いつから出勤・登校できますか?

A. 解熱薬で下がっているだけの可能性があるため、薬を使わずに解熱している状態で判断してください。ウイルスは発症前日から発症後3〜7日ほど排出されます。学校の出席停止期間は法令で定められていますので、診察時にご確認ください。職場については、せきが続いている間は不織布マスクの着用をお願いします。


まとめ

  • インフルエンザは冬だけの病気ではありません。東京都の報告数は、6月中旬の0.06から8月上旬の0.84へ増えています。
  • 温帯で冬に流行するのは、低温・低湿度でウイルスが長生きし、飛沫が小さくなり、気道の防御が落ちるから。冷房した室内では、この条件が部分的に再現されます。
  • ウイルスはHAで細胞のα2,6結合シアル酸にくっつき、細胞側の酵素に切られて活性化し、酸性の小胞の中で膜を融合させて侵入します。
  • 薬はPAのハサミ(バロキサビル)NA(オセルタミビルなど)を止める薬で、増える工程を止めるもの。だから発症48時間以内が勝負です。
  • 寒気と高熱は、サイトカイン → PGE2 → 視索前野という体自身の反応がつくり出しています。ウイルスの毒ではありません。
  • 夏は熱中症との取り違えがいちばん危険です。「かぜ症状があるか」「涼しい所で休んで改善するか」を確認してください。
  • 迅速抗原検査は陽性なら信頼できるが、陰性は否定にならない。発症から半日〜48時間の受診が目安です。
  • インフルエンザウイルスはエンベロープを持つのでアルコール消毒が効きます。手洗いと併用してください。

暑さで体力を消耗している時期に高熱が出ると、それだけで判断力も落ちます。「この暑さだから、たぶん夏バテだろう」と思ったときこそ、経過を振り返ってみてください。急な寒気から始まったのなら、それは夏バテではないかもしれません。迷ったときは、遠慮なくご相談ください。東中野の内科クリニックとして、必要な検査と、必要のない薬を出さない診療を心がけています。

いたや内科クリニック TEL 03-3366-3300

 

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状の判断や薬の使用については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。


参考文献

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