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食中毒と感染性胃腸炎の違い|下痢・嘔吐が出たときの対処を東中野の内科が解説
2026.08.20
「食中毒」と「感染性胃腸炎」は対立する言葉ではなく、多くは同じ出来事を別の角度から呼んだものです。令和6年の食中毒統計、潜伏期間からの原因の絞り込み、水様性下痢と血便が起こる分子レベルのしくみ、経口補水液が効く理由、やってはいけない対処、受診の目安を東中野の内科クリニックが解説します。
【目次】
東中野の内科クリニックでも、夏は下痢・嘔吐のご相談が増えます
「食中毒」と「感染性胃腸炎」は、切り口の違う言葉です
数字で見る — 令和6年の食中毒
細菌は夏、ウイルスは冬
「いつ食べたか」から犯人はかなり絞れます
水のような下痢が出るしくみ(毒素型)
発熱と血便が出るしくみ(感染型)
ノロウイルスが、あれほど広がる4つの理由
なぜ吐くのか — 嘔吐は脳が起こす防御反応
家でいちばん大事なのは、水と塩を入れ直すこと
やってはいけない対処
東中野で受診するかどうかの目安
よくあるご質問
まとめ
参考文献
東中野の内科クリニックでも、夏は下痢・嘔吐のご相談が増えます
「昨日の焼き鳥のせいだと思う」。「家族が先に吐いて、今度は自分が下痢になった」。「食べて2時間で吐いたから、あれが原因に違いない」。夏になると、東中野のクリニックにもこうしたご相談が増えてきます。
このとき、患者さんからよく聞かれるのが「これは食中毒ですか、それとも胃腸炎ですか」という質問です。結論から申し上げると、この2つは対立する言葉ではありません。多くの場合、同じひとつの出来事を、違う角度から呼んでいるだけです。
この記事では、東中野の内科クリニックとして、下痢と嘔吐が出たときに何を考え、家で何をすればよいのかを、正確にお伝えします。まず2つの言葉の関係を整理し、次に国の統計で「実際に何が多いのか」を確かめ、そのうえで下痢と嘔吐が体の中でどうやってつくられているのかを、分子のレベルまで図で追いかけます。最後に、経口補水液の正しい使い方、やってはいけない対処、受診の目安をご案内します。
結論を先にお伝えすると、大切なポイントは3つです。①「いつ食べたか」から原因はかなり絞れる。②水のような下痢は「腸の蛇口が開いた」状態で、危険なのは脱水そのもの。③発熱や血便があるときの自己判断の下痢止めは避ける。この3つを知っていれば、家での動き方が変わります。
「食中毒」と「感染性胃腸炎」は、切り口の違う言葉です
まず、いちばん誤解されやすいところからお伝えします。
「食中毒」は、原因が飲食物にあるかどうかで区切った言葉です。食品衛生法にもとづく行政上の分類で、医師が食中毒を疑ったときは保健所へ届け出ることが義務づけられています(厚生労働省「食中毒」)。
いっぽう「感染性胃腸炎」は、体で何が起きているかを表した言葉です。細菌やウイルスが原因で、胃や腸に炎症が起きている状態を指します。原因が食べ物であってもなくても、この状態であれば感染性胃腸炎です。
ですから、次のような整理になります。
- 両方に当てはまる:カキでノロウイルスにかかった、鶏の刺身でカンピロバクターにかかった — もっとも多いパターンです。
- 食中毒だが胃腸炎ではない:毒キノコ、フグ毒、化学物質、アニサキス。原因は食べ物ですが、微生物が腸に感染して炎症を起こしているわけではありません。
- 胃腸炎だが食中毒ではない:家族や職場の人からうつったノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス。食品を介していないため、行政上は食中毒に分類されません。
つまり、「食中毒か胃腸炎か」を言い当てることに、治療上の意味はあまりありません。大切なのは「原因は何か」「脱水はどの程度か」「危険なサインが出ていないか」です。この記事でもそこを中心にご説明します。
数字で見る — 令和6年の食中毒
印象ではなく、まず数字を見てください。令和6年(2024年)に日本で報告された食中毒は、1,037件・患者14,229人・死者3人でした。東京都だけで114件・1,536人です(厚生労働省「食中毒統計資料」)。
ここで面白いのは、「件数が多い原因」と「人数が多い原因」が違うことです。
件数の1位はアニサキス(330件)ですが、患者数は337人。つまりほぼ1件につき1人です。サバやアジ、イカなどの生食で、寄生虫が胃の壁に刺さって激しい腹痛を起こすもので、集団発生にはなりません(厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」)。
患者数の1位はノロウイルス(8,656人)で、全患者の6割を占めます。件数は276件ですから、1件あたり平均30人以上が発症している計算になります。給食、仕出し弁当、宴会など、大人数が同じものを食べる場面で起こるためです。
細菌でもっとも件数が多いのはカンピロバクター(208件・1,199人)。鶏肉の生食や加熱不足が主な原因です。患者数で見るとウエルシュ菌(43件・1,889人)が目立ちますが、これは「大鍋でつくって室温で置いたカレーやシチュー」で起こる典型的な集団食中毒です。
細菌は夏、ウイルスは冬
季節によって、疑うべき相手は大きく変わります。
細菌による食中毒は7月の45件がピークで、12月は19件しかありません。逆にノロウイルスは2月の70件がピークで、7月から10月にかけては月に2〜4件しか報告されていません。
理由ははっきりしています。細菌は食品の中で増えるため、気温と湿度が上がるほど有利になります。とくに30℃前後は多くの食中毒菌にとって増殖しやすい温度です。いっぽうノロウイルスは食品の中では増えません。人の腸の中でしか増えないので、食品の温度は関係なく、むしろ低温・乾燥した環境で長く生き残ることのほうが流行に効いてきます。
ですから、いまの季節(8月)に下痢と嘔吐が出たなら、まず細菌を考えます。ただし、夏でもノロウイルスがゼロになるわけではありませんし、家族間でうつるウイルス性胃腸炎は一年中あります。
「いつ食べたか」から犯人はかなり絞れます
診察室で最初にうかがうのが、「症状が出る何時間前に、何を食べましたか」です。潜伏期間は原因ごとにかなり違うため、ここだけで候補が絞れます。
食後30分〜6時間で、吐き気と嘔吐が主体。これはすでに食品の中でできあがっていた毒素を食べたパターンです。黄色ブドウ球菌(おにぎり、サンドイッチ、調理する人の手指の傷から)やセレウス菌(チャーハン、焼きそば、パスタなど、炊いて放置した米や麺)が代表です。菌が体内で増える時間が要らないので、立ち上がりが速い。発熱は軽いか、まったくないことも多いのが特徴です。
食後6〜24時間なら、ウエルシュ菌(大鍋のカレー・シチュー・煮物)や腸炎ビブリオ(生の魚介)。
食後12〜48時間でノロウイルス。1〜7日ならカンピロバクター。カンピロバクターは2〜5日後に発症することが多く、「昨日食べたもの」を疑って原因を見失いやすい代表格です。鶏の刺身、鶏わさ、加熱不足の焼き鳥を数日前に食べていないか、必ず振り返ってください(厚生労働省「細菌による食中毒」)。
そして3〜8日後に、激しい腹痛と血便。これは腸管出血性大腸菌(O157など)を必ず考える組み合わせです。ここがいちばん危険なので、後ほど詳しくご説明します。
水のような下痢が出るしくみ(毒素型)
ここから、体の中で実際に何が起きているのかを見ていきます。下痢には大きく2つのタイプがあり、体の中で起きていることも、危険の種類も違います。
ひとつめが分泌性下痢。コレラ毒素や毒素原性大腸菌の毒素が代表で、腸の細胞の「水を出す装置」を開きっぱなしにしてしまいます。
順を追うと、こうなります。毒素が腸の上皮細胞に結合すると、細胞内のアデニル酸シクラーゼという酵素が活性化され、cAMPという伝令物質が増えます。cAMPはPKA(プロテインキナーゼA)を活性化し、PKAが細胞の管腔側にあるCFTRという塩素イオンの出口をリン酸化して、開いたままにします。
すると塩素イオン(Cl⁻)が腸の中へ流れ出し、電気的な釣り合いをとるためにナトリウム(Na⁺)が続き、浸透圧に引かれて水がついていきます。腸は本来「水を吸収する臓器」ですが、分泌が吸収を上回った瞬間に、水は外へ出るしかなくなります(Hodges K, Gill R. Infectious diarrhea: Cellular and molecular mechanisms. Gut Microbes. 2010)。
このタイプでは粘膜そのものはあまり壊れていません。ですから血便にならず、発熱も目立ちません。そのかわり水と電解質がどんどん失われます。危険なのは脱水そのもので、「止める」ことより「入れ直す」ことが治療の中心になります。
発熱と血便が出るしくみ(感染型)
もうひとつが炎症性下痢です。カンピロバクター、サルモネラ、赤痢菌、腸管出血性大腸菌などがこちらで、菌が腸の粘膜そのものに取りつき、壊しにいきます。
菌が上皮細胞に付着して侵入すると、細胞が死んで粘膜にただれができます。そこにサイトカインが放出されて好中球が集まり、発熱と強い腹痛が生まれます。ただれた粘膜からの出血と粘液・膿が便に混じり、血便になります。つまり、血便と高熱は「菌の毒」ではなく、粘膜が壊れ、そこで免疫が戦っている証拠です。
腸管出血性大腸菌だけは、さらに先があります
O157をはじめとする腸管出血性大腸菌は、志賀毒素(ベロ毒素)をつくります。この毒素は腸にとどまらず血流に乗って全身に運ばれ、腎臓や脳の細い血管の内皮細胞に結合してタンパク合成を止め、細胞を殺します。
その結果起こるのが溶血性尿毒症症候群(HUS)です。赤血球が壊れ、血小板が減り、腎臓が働かなくなります。特徴的なのは下痢が始まってから数日〜1週間後に、急に悪化することです。「下痢は良くなってきたのに、尿が出なくなった」「顔色が悪く、ぐったりしてきた」という経過をたどります。子どもと高齢の方でとくにリスクが高いことが知られています(厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」)。
ここが重要なのですが、この状況で下痢止めを飲むのは危険です。腸の動きを止めることで、毒素と菌を腸内に長くとどめてしまうためです。抗菌薬についても、HUSのリスクを上げる可能性が議論されており、使うかどうかは慎重な判断を要します(Freedman SB, et al. Shiga Toxin-Producing Escherichia coli Infection, Antibiotics, and Risk of Developing Hemolytic Uremic Syndrome: A Meta-analysis. Clin Infect Dis. 2016)。血便が出たら、市販薬でしのごうとせず受診してください。
カンピロバクターには、数週間後の合併症があります
もうひとつ知っておいていただきたいのが、カンピロバクター感染の1〜3週間後に、手足の力が入らなくなるギラン・バレー症候群が起こることがある、という点です。
これは菌そのものが神経を攻撃するのではありません。カンピロバクターの表面にある糖鎖が、ヒトの末梢神経のガングリオシドとよく似た構造をしているため、菌を攻撃するためにつくられた抗体が、まちがえて自分の神経を攻撃してしまうのです。分子擬態と呼ばれる現象です(Yuki N, Hartung HP. Guillain-Barré syndrome. N Engl J Med. 2012)。
頻度としてはまれですが、下痢が治ったあと、足の力が入らない・しびれが上がってくるという場合は、必ず医療機関にご相談ください。
ノロウイルスが、あれほど広がる4つの理由
冬の主役ですが、夏でもゼロにはなりません。そして「よくある胃腸炎」と侮れない性質をいくつも持っています。
①ごく少量で感染します。ウイルス粒子が数十個あれば感染が成立すると報告されています。いっぽう患者の吐物やふん便には1gあたり億の単位で含まれます。つまり目に見えない量の取りこぼしでも次の人にうつるということです(Robilotti E, et al. Norovirus. Clin Microbiol Rev. 2015)。
②アルコールが効きにくい。ノロウイルスはエンベロープ(脂の膜)を持たない構造です。アルコール消毒は本来この膜を壊して効くので、膜のない相手には届きにくい。石けんと流水での手洗い、そして塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)が基本になります(厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」)。
③環境で長く生き残ります。乾燥にも低温にも強く、ドアノブやカーペットの上で数日以上感染力を保ちます。乾いた吐物がほこりとして舞い上がり、それを吸いこんで感染する経路も知られています。
④治っても排出が続きます。症状が消えたあとも、ふん便中へのウイルス排出は1〜2週間、長いときは1か月ほど続きます。「もう治ったから」と考えて調理に戻ることが、集団発生の起点になります(国立健康危機管理研究機構「ノロウイルス感染症」)。
同じものを食べても、かかる人とかからない人がいます
ノロウイルスは、腸の細胞の表面にある血液型物質(HBGA:組織血液型抗原)を足場にして取りつきます。この物質を細胞表面に並べる酵素の遺伝子(FUT2)が働いていない人は、日本人のおよそ2割いるとされ、特定の型のノロウイルスに感染しにくいことが分かっています。
「同じ牡蠣を食べたのに自分だけ平気だった」という話には、こうした体質の背景があります。ただしすべての型に強いわけではないので、油断はできません。
なぜ吐くのか — 嘔吐は脳が起こす防御反応
嘔吐は「胃が勝手に逆流している」わけではありません。脳幹が指令を出して、筋肉に組み立てさせている動作です。
毒素や炎症が腸を刺激すると、腸の壁にある腸クロム親和性細胞がセロトニン(5-HT)を放出します。これが迷走神経の末端にある5-HT₃受容体に結合し、信号が延髄の孤束核へ伝わります。
もうひとつ、延髄には最後野(area postrema)という場所があります。ここは脳のなかでも例外的に血液脳関門がゆるく、血液中の毒物を直接感知できる「毒見役」です。血液に入った毒素はここで検知されます(Zhang C, et al. Area Postrema Cell Types that Mediate Nausea-Associated Behaviors. Neuron. 2021)。
これらの信号がそろうと、横隔膜と腹筋が同時に収縮し、幽門が閉じ、食道下部がゆるみ、胃の中身が押し出されます。つまり嘔吐は、体が「これ以上入れるな、いま入っているものを出せ」と判断した結果です。
医療機関で使う吐き気止めは、この経路の5-HT₃受容体やドパミンD₂受容体をふさいで信号を止めます。ただし嘔吐には意味があるので、原因を確かめないまま止めることが最善とはかぎりません。「吐き気で水すら飲めない」という状態を崩すために使う、というのが実際の使い方です。
家でいちばん大事なのは、水と塩を入れ直すこと
下痢と嘔吐で失われるのは、水だけではありません。ナトリウム、カリウム、塩素、そして重炭酸が一緒に出ていきます。ですから水だけを飲むと、体液が薄まってかえって具合が悪くなることがあります。
ここで登場するのが経口補水液(ORS)です。これは「甘くてしょっぱい飲み物」ではなく、腸に残っている輸送のしくみを使うために設計された液です。
小腸の細胞にはSGLT1という輸送体があります。これはナトリウム1個とブドウ糖1個を、同時に細胞内へ引きこむ装置です。ナトリウムが吸収されれば、浸透圧に引かれて水がついてきます。
そして決定的に重要なのは、コレラのような激しい分泌性下痢の最中でも、このSGLT1は生きているという点です。この事実が発見され、点滴が使えない場所でも口から飲ませるだけで脱水死を防げるようになりました。20世紀の医学でもっとも多くの命を救った発見のひとつと評価されています(Binder HJ, et al. Oral rehydration therapy in the second decade of the twenty-first century. Curr Gastroenterol Rep. 2014)。
飲み方は「量」より「回数」です
- 吐いている最中は、小さじ1杯(5mL)を5分おきから始めてください。一気に飲むと、また吐きます。
- 15〜30分吐かずにいられたら、少しずつ量を増やします。
- 目安は下痢や嘔吐1回につきコップ1杯程度を追加で補給。
- 味が塩辛く感じるうちは体が塩を欲している状態です。おいしく感じなくなってきたら、脱水が改善してきたサインと考えられます。
なお、スポーツドリンクは経口補水液の代わりにはなりません。ナトリウムが少なく糖が多いため、下痢のときには糖が腸に残って浸透圧性の下痢を悪化させることがあります。手元にどうしてもないときの一時しのぎとしては、薄めて少量ずつ、というのが現実的です。
食事はいつから戻すか
「腸を休ませるために絶食」は、現在は推奨されていません。吐き気が落ち着いたら、食べられるものから早めに戻すほうが、粘膜の回復が早いとされています。おかゆ、うどん、バナナ、じゃがいも、白身魚など、脂と食物繊維の少ないものから。脂っこいもの、香辛料、アルコール、カフェイン、冷たい牛乳はしばらく控えてください。
やってはいけない対処
よかれと思ってやったことが、経過を悪くすることがあります。
① 発熱や血便があるときの下痢止め
ロペラミドなど腸の動きを止める薬は、菌や毒素を腸内に閉じこめます。とくに腸管出血性大腸菌が疑われる場面では危険です。「水様便が続いてつらい」という段階で、発熱も血便もなければ使う場面はありますが、血便・高熱があるときは避けてください。
② 自己判断での抗菌薬
下痢の大半はウイルス性か、細菌性でも自然に治ります。抗菌薬は多くの場合不要で、かえって腸内細菌のバランスを崩して下痢を長引かせることがあります。以前もらって余っている抗菌薬を飲む、というのはとくに避けてください。
③ 吐物にアルコールをかけて拭く
ノロウイルスにはアルコールが効きにくいことは、先に述べたとおりです。使い捨て手袋とマスクを着け、ペーパータオルで外側から内側へ静かに拭き取り、袋を二重にして密閉してください。そのあと塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)で消毒します。市販の家庭用塩素系漂白剤を薄めて使えます(金属は錆びるので注意)。
④ タオルの共用
家庭内感染のもっとも多い経路のひとつです。症状のある方が出ている間だけでもペーパータオルに切り替えると、家族内での広がりは目に見えて減ります。
東中野で受診するかどうかの目安
下痢と嘔吐の大半は、水分をとって休んでいれば数日で治まります。ただし、次のサインがあるときは待たないでください。
すぐに受診・救急要請が必要な症状
- 水分がまったくとれない、飲んでもすぐ吐く
- 半日以上おしっこが出ない、色が極端に濃い
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い
- 激しい腹痛が続く、お腹を押すと強く痛む
- 血便が出た(赤い血が混じる、イチゴジャムのような便)
- 呼吸が速い、手足が冷たい、立ちくらみで立てない
当日〜翌日に受診したほうがよい症状
- 38℃以上の発熱を伴う下痢
- 下痢が1日10回以上、あるいは3日以上続く
- 嘔吐が半日以上止まらない
- 同じ食事をした人も同じ症状になっている
- 海外渡航から戻って発症した
- 生肉・生魚・加熱不足の食品に心当たりがある
- 持病がある、妊娠中である、ご高齢である、小さなお子さんである
当院では、院内感染対策のため発熱・かぜ症状のある方と、生活習慣病などで通院中の方の受診時間を分けています。発熱外来は完全予約制です。嘔吐・下痢の症状があるときも、来院前にお電話でご連絡ください。
- 平日(月・火・木・金):11:00〜12:00/15:30〜17:00
- 土曜日:10:30〜12:30
- 休診日:水曜・日曜・祝日
初診の流れは初診の方へ、アクセスはアクセス・案内をご覧ください。当院はJR総武線 東中野駅 西口より徒歩2分、都営大江戸線 東中野駅 A2出口より徒歩2分です。消化器内科の診療についてもご案内しています。
受診されるときにお伝えいただきたいこと
- いつ・何を食べたか(3日前までさかのぼると役に立ちます)
- 症状が始まった時刻と、最初に出た症状(吐き気からか、下痢からか)
- 便の性状(水様か、血が混じるか、白っぽいか、粘液が多いか)
- 1日の回数と、最後に排尿した時刻
- 熱の有無、同じものを食べた人の様子
- 持病、常用薬(とくに胃薬・免疫を抑える薬)、海外渡航歴
よくあるご質問
Q. 食べてすぐ気持ち悪くなりました。直前に食べたものが原因ですか?
A. その可能性はありますが、直前に食べたものが原因とはかぎりません。30分〜6時間で嘔吐が出るのは黄色ブドウ球菌やセレウス菌などの毒素型で、これは当てはまります。ですがカンピロバクターなら2〜5日前、腸管出血性大腸菌なら3〜8日前です。「いちばん最後に食べたもの」に引っぱられると原因を見失います。
Q. 下痢が続いてつらいです。市販の下痢止めを飲んでよいですか?
A. 発熱も血便もなく、水のような便が続いてつらいだけなら、短期間の使用は選択肢になります。ただし38℃以上の熱があるとき、血便が出ているとき、強い腹痛があるときは飲まないでください。菌と毒素を腸内にとどめてしまいます。判断に迷うときはご相談ください。
Q. 便を調べれば原因は分かりますか?
A. 便培養検査で細菌を調べることができます。ただし結果が出るまで数日かかるため、その場で治療方針が決まるわけではありません。血便がある、渡航歴がある、集団発生が疑われる、症状が長引く、といった場合には実施する意義が大きくなります。やみくもに全員に行う検査ではないとお考えください。
Q. 家族にうつさないために、いちばん効くことは何ですか?
A. 石けんと流水での手洗いです。とくにトイレのあとと調理の前。あわせてタオルを分ける(またはペーパータオルにする)、吐物や便の処理は使い捨て手袋で行い、塩素系で消毒する、症状のある方は最後に入浴する。この4つで家庭内感染はかなり防げます。
Q. 症状が治まりました。いつから仕事に戻れますか?
A. 一般的には症状が消えて24〜48時間が目安です。ただし調理や食品を扱うお仕事、保育や介護のお仕事の方は別です。ノロウイルスは症状が消えたあとも1〜2週間はふん便中に排出されます。職場の規定と、診察時のご相談で決めてください。
Q. カキは加熱すれば大丈夫ですか?
A. ノロウイルスは中心部が85〜90℃で90秒以上の加熱で不活化されるとされています。表面だけ焼けている状態では不十分です。また調理器具や手指を介した二次汚染のほうが実際には多いので、生食用の食材を扱ったまな板と包丁は、そのあと必ず洗浄・消毒してください。
Q. 「あたった」のは自分だけです。食中毒ではないのでしょうか?
A. 一人でも食中毒は起こります。アニサキスはほぼ全例が単発ですし、カンピロバクターも家庭内で一人だけ発症することはよくあります。食べた量、その人の胃酸の強さ、体調によって発症するかどうかが変わるためです。「自分だけだから気のせい」とは考えないでください。
まとめ
- 「食中毒」と「感染性胃腸炎」は対立する言葉ではありません。前者は原因が飲食物かどうか、後者は胃腸に炎症があるかどうかを指しており、重なる部分が非常に大きい言葉です。
- 令和6年の食中毒は1,037件・14,229人。件数はアニサキス、患者数はノロウイルスが最多で、細菌ではカンピロバクターが最多でした。
- 細菌は夏(7月がピーク)、ノロウイルスは冬(2月がピーク)。いま下痢と嘔吐が出たなら、まず細菌を考えます。
- 潜伏期間で原因はかなり絞れます。6時間以内の嘔吐は毒素型、1〜7日後の発熱と下痢は感染型、3日以上たってからの血便は腸管出血性大腸菌。
- 水様性下痢はcAMP → PKA → CFTRという経路で腸の「蛇口」が開いた状態。危険なのは脱水そのものです。
- 血便と高熱は粘膜が壊れて免疫が戦っている証拠。腸管出血性大腸菌では志賀毒素によるHUSに注意が必要です。
- 経口補水液が効くのは、腸のSGLT1がナトリウムとブドウ糖を一緒に運ぶから。下痢の最中でもこの経路は生きています。
- 発熱・血便があるときの自己判断の下痢止めと抗菌薬は避けてください。
- 水分がとれない、半日以上尿が出ない、血便、激しい腹痛 — このときはすぐに受診を。
夏の下痢と嘔吐は「そのうち治る」ことがほとんどです。けれども、その「ほとんど」の外側に、待ってはいけないものが確かにあります。判断の分かれ目は、脱水の程度と、血便の有無です。迷ったときは、遠慮なくご相談ください。東中野の内科クリニックとして、必要な検査と、必要のない薬を出さない診療を心がけています。
いたや内科クリニック TEL 03-3366-3300
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状の判断や薬の使用については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省「食中毒統計資料」(令和6年 食中毒発生状況/病因物質別月別食中毒発生状況)
- 厚生労働省「食中毒」
- 厚生労働省「細菌による食中毒」
- 厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
- 厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
- 厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」
- 東京都保健医療局「令和6年 東京都食中毒発生状況(確定値)」
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「ノロウイルス感染症」
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「カンピロバクター感染症」
- Hodges K, Gill R. Infectious diarrhea: Cellular and molecular mechanisms. Gut Microbes. 2010.
- Robilotti E, Deresinski S, Pinsky BA. Norovirus. Clin Microbiol Rev. 2015.
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- World Health Organization. Oral rehydration salts: production of the new ORS. 2006.
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