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健康診断

これから法人格となる方必見!健康診断は法人の義務?

2022.12.02

法人格を有することになると様々なことが義務として課されるようになり、個人事業の時よりも責任が重くなります。そのうちの一つが健康診断です。この記事では、法人の義務となる健康診断について詳しく解説していきます。これから法人格となる方はぜひ参考にしてください。

【目次】
健康診断は法人の義務?|はじめに
健康診断は法人の義務?|法人化する際の注意点
健康診断は法人の義務?|健康診断の義務はどこに明示されている?
健康診断は法人の義務?|健康診断が必須になる条件とは?
健康診断は法人の義務?|法人の料金負担について
健康診断は法人の義務?|まとめ

 

健康診断は法人の義務?|はじめに

建物の建築写真

この記事を執筆している2022年の時点では、法人化するための条件が緩和されており、かつてよりハードルが下がってきています。

以前は資本金、役員数に関して一定条件を満たさないと法人と認められず、特に資本金は最低でも1,000万円(有限会社は300万円)が必要となっていました。

しかし、2006年に会社法が成立してからはそれらの条件が撤廃され、役員は1人以上、資本金は1円でも法人化が可能な状況となりました。また、有限会社はなくなり、代わりにアメリカのLLCをモデルとした「合同会社」という形態での法人が認められました。

以上の動向によって多くの人が起業を始めやすくなりましたが、気軽に法人化したものの、法人としての義務をあまり知らずに苦労したという人もいるのではないでしょうか。

今回は、今後法人化を検討している方に向けて、法人化する際の注意点を紹介の上、義務の一つである健康診断に焦点を当てて紹介していきます。

なお、資本金1円から始められるといっても、実際に1円とするのは不安という方もいることでしょう。1円にすると資本管理が複雑になったり、信用の問題で融資に不利に働いたりという可能性があるからです。

そのため、資本金はいくらにするべきか悩んでいる方は「起業前に知っておくべき「資本金」の仕組みを5分で解説」をご参照ください。

 

健康診断は法人の義務?|法人化する際の注意点

法人化の際に注意するべき点を知っていただくために、法人化のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

まず大きなメリットの一つとして、社会的な信用を得られるようになるという点が挙げられます。

個人事業の場合はその実態が不明瞭なことも多く、事業の停止も自己判断で簡単に行えてしまいます。対して法人の場合は、社会的な責任を負うこととなり、利益がままならないからといって安易に廃業できません。

しかしその一方で信用は得やすいです。法人化することで法人用のクレジットカードや口座開設も可能となります。

二つ目のメリットは、経費として扱える範囲が広くなり節税ができる、損失が発生した場合も10年間繰越して相殺可能という点です。利益分を役員報酬とすれば所得控除対象となり、家族への報酬も経費にできるようになります。

三つ目のメリットは、厚生年金保険への加入です。厚生年金保険への加入は法人の義務であり、社員の厚生年金・健康保険料を、社員本人と法人で折半することになります。

そのため法人化のメリットには思えないかもしれませんが、社員側からしたら、厚生年金保険が備わっていることで企業を信用することができます。また、年金支給額が増える、厚生年金保険ならではの生活保障制度が受けられるという面もあります。

デメリット

前述しましたが、簡単には廃業できないという点がデメリットの一つです。

個人事業の場合は開業・廃業共に少ない書類で簡単に行えます。しかし法人の場合は、解散に伴う登記や清算、申告、納税の多くの手配が必要となります。

二つ目のデメリットは、例え赤字だとしても社員の給与や税金・保険料を支払わなければいけないという点です。

三つ目のデメリットは、個人事業の場合よりもコストがかかりやすいという点です。例えば通信費など、経営を継続するのに必要となる費用において、法人専用の価格での支払いが必要となる場合があります。

なお、厚生年金保険への加入や、今回紹介する健康診断の義務化についても、費用や手間の面で見るとデメリットの一つとも取れるでしょう。

これから法人化する場合は、2023年10月から導入される「インボイス制度」について気になっている方もいるのではないでしょうか。インボイス制度について知っておきたい方は「法人化(法人成り)するならインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入の前と後どちらにすべき?」をご参照ください。

 

健康診断は法人の義務?|健康診断の義務はどこに明示されている?

ヘルスケアと医療の概念。聴診器を手に持つ医学の医者と患者は病院の背景に来る。 - 病院 ストックフォトと画像

健康診断が法人の義務と定められている法律は「労働安全衛生法」で、第66条にその詳細が記されています。

なお、この項目には健康診断の実施だけではなく、健康診断の結果の通知について、健康状態に問題があった場合は医師の判断に基づいた職場や仕事内容の変更、労働時間短縮などの見直しも求められています。

違反した場合はどうなる?

もし法人がこれを違反した場合は、50万円以下の罰金、健康診断の情報漏洩があった場合は6ヶ月以下の懲役となる可能性があり、これらに伴って社会的信頼性を失う可能性も出てきます。

健康診断の実施は当然のことながら、リスク回避方法として、診断結果の管理方法、閲覧権限についても社内で厳格に定めておきましょう。

労働安全衛生法違反、安全配慮義務違反とならないよう、法人化を検討している方は、この記事をきっかけにあらかじめ正しく理解しておきましょう。

労働安全衛生法に関しては、こちらの厚生労働省のPDFもあわせてご覧ください。

 

健康診断は法人の義務?|健康診断が必須になる条件とは?

黒いフラット スクリーン コンピューター モニターの横に座っている黒いジャケットを着た男

法人の場合、健康診断は一人でも社員がいれば受診しなければいけない状態となります。また正社員だけではなく、契約社員、アルバイト・パートという雇用形態であっても、「一週間あたりの労働時間数が、定められた時間の4分の3以上となる場合」や「これまでに1年以上継続勤務している、あるいは1年以上の契約を結んでいる場合」は実施する必要が出てきます。

近年はリモートワークという働き方が普及してきましたが、この場合も上記は当てはまります。

さらに、社員が50人以上となる場合には健康診断結果の報告義務も発生します。労働基準監督署ヘ向け、健診実施期間や受診人数、有所見者数などの項目を報告しなければなりません。同じく、産業医の選任も義務付けられるようになります。

なお、ここで言う健康診断とは、勤務開始後年1回実施する定期健康診断であり、その他に雇い入れ時の健康診断、業務上、特定業務に指定された項目がある場合は、特定健康診査も実施する必要があります。

拒否された場合は?

法律で定められているため、社員も拒否はできません。しかしながら万が一、断固拒否するという社員がいた場合、強制的に受けさせる、あるいは懲戒処分とすることも可能です。

しかしながら上記は最悪の場合であり、基本的には、本人に健康診断の義務を正しく理解してもらえるよう説明し、納得して受けてもらうことが望ましいでしょう。

また復職した場合は別ですが、産休や育休、介護休に入っている社員は健康診断の対象からは除外されるので、無理に受けさせる必要がないこともあわせて覚えておいてください。

特殊健康診断

有害業務、危険を伴う作業を行う職業がある企業では、それらに従事する社員に関して、一般健康診断ではなく、特殊健康診断を受けてもらう必要があります。

放射能や粉じん、有機溶剤、石綿といった有害物質によって健康に影響が出ていないかを調べるための検診となります。そのため法人は、特殊健康診断の対象となる業務が自社に存在していないかを事前に把握しておくことが重要です。

受診が必要となる一般健康診断の項目を知りたい方は、「健康診断の実施は企業の義務。企業の福利厚生、健康経営の推進としての健康診断」もあわせてご覧ください。

 

健康診断は法人の義務?|法人の料金負担について

健康診断の費用は多くの場合、企業側の負担となりますがその負担のうち一部を福利厚生費として、所属している健康保険組合へ補助金の申請をすることができます。

なお、人間ドックなどの一般健康診断に該当する項目以外の診断を希望する場合は一部、もしくは全額を社員の自己負担としている企業もあります。

要再検査・要精密検査となった場合の受診費用も社員の自己負担になりますが、中には、企業指定の医療機関であれば負担するというところもあります。

福利厚生とするには「社員全員が受ける」「健康診断が社員の健康管理を目的としている」「費用を企業が直接医療機関へ支払っている」ということが条件となります。いずれかが漏れていると福利厚生にはならないのでご注意ください。

また、健康診断は「自由診療」に分類されるため医療機関によって費用が異なります。コストはもちろん、社員の受け易さなども考慮した上で依頼する場所を選定しましょう。

健康診断を受ける時間帯について

健康診断の時間を業務時間内とするかどうかについては、法律に規定はありません。そのため、判断は企業側に委ねられます。

そうとは言っても、厚生労働省では受診に要した時間分の賃金は企業側が払うことが望ましいとの見解がされているという状況もあります。

いずれの場合にしても、社員との認識に相違が生まれないよう、事前の十分な説明を怠らないようしておきましょう。

健康診断の時間の扱いについては「健康診断費用は会社負担?追加検査の負担や受診時間分の賃金の必要性」にも詳しい説明が掲載されていたので、あわせてご覧ください。

個人での健康診断の受け方|まとめ

以下が今回のまとめとなります。

  • 健康診断は法人の義務となる
  • 「労働安全衛生法」にて定められている
  • 違反した場合は罰金、診断結果の漏洩があった場合は懲役も有りうる
  • 社員50人以上の場合は報告義務も発生する
  • 社員50人以上の場合は産業医の選任も必要となる
  • 一般健康診断の費用は企業持ちであることが多い
  • 健康診断の時間は業務時間とすることが望ましい

一緒に歩きながらお互いの対話の医療チーム ストックフォト

弁護士による健康診断に対する見解が紹介されたページもあったため、興味のある方は「健康診断は会社の義務?【弁護士が解説】」をご参照ください。