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循環器内科

動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介

2023.03.03

人間の体に起こる病気はわかりやすいものばかりではありません。風邪や虫歯であればくしゃみや痛み等の症状でわかりますが、ほとんど自覚症状が現れず、気づいたら重大な病気を発症しているというものもあります。この記事ではそんな「サイレントキラー」と呼ばれる「動脈硬化疾患」の治療法について紹介します。あわせて原因や予防法、検査方法についても紹介するので、動脈硬化疾患について理解を深めたいと思っている方はご覧ください。

【目次】
動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|はじめに
動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|動脈硬化疾患を引き起こす原因について
動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|動脈硬化疾患の予防法
動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|どのような検査があるか
動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|動脈硬化疾患と診断されたらどのように治療していくか
動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|まとめ

動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|はじめに

動脈硬化疾患は、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった持病によって症状が進む病態であると共に、進行すると更に重大な病気につながる可能性があります。

2021年(令和3年)に厚生労働省が公表している「人口動態統計月報年計(概数)の概況 」では、日本人の死因1位の悪性新生物(がん)に次いで心疾患が2位となっています。

心疾患とは狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気全般を指していますが、これらは動脈硬化が進行して発症する病気です。そのため、動脈硬化疾患は隠れた死因とも言われています。

この記事では動脈硬化疾患に対する治療法を紹介していきますが、はじめに結論を言ってしまうと、動脈硬化疾患を完治できるような治療は2023年時点で確立されていません。

そのため、動脈硬化疾患にならないための、あるいは進行を防ぐための予防が重要であり、それでも動脈硬化疾患となってしまった場合は、その症状を緩和させるための治療が行われることとなります。

今回は、動脈硬化疾患を引き起こす原因を見たうえで、その予防策を紹介し、さらに検査方法、治療方法について紹介していきます。

なお、日本国内には動脈硬化性疾患予防ガイドラインやメタボリック症候群の診断基準を作成している「一般社団法人日本動脈硬化学会」という団体があります。

動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|動脈硬化疾患を引き起こす原因について

動脈硬化疾患と聞くと、その名称からして動脈が硬くなって血液の流れに支障を来すのだろうと想像することでしょう。

これは間違いではありませんが、実は動脈硬化疾患はタイプとしては2つ、そして種類は3つ存在します。まずタイプは、「狭くなる」か「硬くなる」かに分けられます。

このうち狭くなるタイプの一つが「アテローム動脈硬化」で、一般的に動脈硬化疾患と言った場合はこちらを指すことが多いです。

アテローム動脈硬化は、悪玉コレステロール(LDL)が血管の内膜に付着して溜まることで血液の通り道を狭くなった状態です。

悪玉コレステロールはインスタント食品や脂っこい食べ物ばかり摂取したり、野菜を食べなかったりというように偏った食生活をすると溜まりやすくなります。

本来、悪玉コレステロールもエネルギーを身体中に運ぶために重要な役割を持っています。しかしこのコレステロールは酸化しやすいという特徴を持っており、酸化することで人間の体に悪影響を与えます。

なお、喫煙は悪玉コレステロールの酸化を促進する作用があると言われています。

悪玉コレステロールは血管内に溜まり込んで、プラークという塊を作ります。血中の白血球はこのプラークを摂取しますが、過剰に摂取すると炎症物質を放出して死に絶えます。

この白血球の死骸が蓄積することで血管の内膜が押し上げられ、血管が細くなってアテローム動脈硬化となります。

アテローム動脈硬化になると狭心症や、末梢動脈疾患を引き起こすだけではなく、血栓ができやすい状態となることで血管を詰まらせる原因となります。

なお「末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)」とは、動脈硬化が進行したことで動脈を詰まらせる状態を表します。

末梢動脈疾患になると主にふくらはぎ、太もも、骨盤を通る血管を狭くして詰まらせることとなり、エネルギーや酸素を十分に送れなくなります。そうなると足の痺れや冷え、一時的な痛みという症状が出てきます。

硬くなるタイプの動脈硬化疾患としては「中膜硬化(石灰化)」がありますが、これはカルシウムが沈着することで血管が硬くなる状態です。

カルシウムが体に悪く働くというのはあまり聞いたことがないかもしれませんが、高血圧等の病気がある場合は、カルシウムの石灰化が促進されます。

石灰化によって血管が硬くなると伸縮性がなくなって脆くなり、血管壁が破れやすい状態となります。

もう一つの硬くなるタイプの「細動脈硬化」は、脳や腎臓にある細い動脈の壁が厚くなって硬化し、狭くなって十分な血液を送れない状態となります。細動脈硬化の原因は、高血圧や糖尿病が継続していることです。

知っておきたい動脈硬化」では動脈硬化疾患のタイプについて図解されていたので、より詳しく知りたい方はご覧ください。

動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|動脈硬化疾患の予防法

動脈硬化疾患になる原因は様々で、糖尿病や高血圧、肥満、脂質代謝異常の症状がある人、喫煙者、40歳以上の加齢、運動不足、ストレス過多、食生活が偏っている等が挙げられます。

糖尿病や高血圧、脂質代謝異常を患っている人はそれらの治療を行うことが先決であり、加齢は避けて通れないものですが、この中でストレス過多や喫煙や運動不足、食生活の偏りに関しては、自分でもどうにかできる部分と言えます。

仕事や人間関係ですぐにストレスを減らすことは難しいとしても、運動や娯楽等のストレス解消できる術を探したり、禁煙に挑戦してみたり、適度な運動を始めたり、日々の食事内容を見直したりということは、自分ですぐに始めることが可能です。

タバコは動脈硬化をもたらすニコチン等の物質が含まれており、コレステロールの酸化を促進するため、禁煙外来の受診を検討してみても良いかもしれません。

食事については、肉、卵、バターといった動物性脂肪やインスタント食品、脂っこい食べ物、甘いものの摂取を控える、料理をする場合は味を濃くしすぎない、野菜を多く摂取する、飲酒の量を抑えるといったことが効果的です。

動物性脂肪には悪玉コレステロールの原因となる飽和脂肪酸が多く含まれ、砂糖や果糖は肥満の原因になるだけではなく糖尿病の原因となり、塩分の摂りすぎは高血圧につながります。

一方で、食物繊維の含まれる野菜等を摂取することで血液の状態を改善することができます。なお、ビタミンCやEは抗酸化作用があるので良いですが、Eは酸化しやすいという特徴があるため、Cと一緒に摂取することをおすすめします。

動脈硬化疾患は、年齢を重ねてから発症することが多いため、若いうちは暴飲暴食をしても問題ないのではと思う方もいるかもしれません。

しかし、これまでの生活スタイルの積み重ねた結果として現れるのが動脈硬化なので、早いうちから予防方法を知っておいて実践しておくに越したことはありません。

 日本動脈硬化学会のサイト内にも予防方法についてまとめられたページがあったので、「動脈硬化性疾患の発症を予防するためには?」もご参照ください。

動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|どのような検査があるか

動脈硬化をもたらす症状を確認できる検査方法は様々です。

血圧の状態を拡張期血圧・収縮期血圧を測定することで確認する「血圧測定」や、脂質異常症、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症といった病気の可能性がないかを確認できる「血液検査」、血液の流れる速度を測定して血管年齢やつまり具合を確認する「PWV検査」等があります。

また、脳血管、頚動脈、冠動脈、大動脈、腎動脈、下肢動脈といった部分に動脈硬化が表れていないかを確認する「MRI検査」や、脳梗塞の予測として有用な「超音波検査」、ABI検査もあります。

何らかの病気を発症していない状態で検査をする場合は、対象者に負担のない検査が選択され、病気を発症している場合はある程度の負担も発生する検査を行うという方法が一般的となっています。

検査については、「動脈硬化の診断と検査」でも説明されています。

動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|動脈硬化疾患と診断されたらどのように治療していくか

前述したような予防も食事療法、運動療法として治療法の一つとして数えることができますが、これらで改善がみられない場合は、薬物療法が行われます。

薬物療法としては一般的に、血中のコレステロール値を下げる各種スタチンが利用されますが、2016年には注射薬の「PCSK9阻害薬」も登場しました。

こちらは悪玉コレステロール値を下げることで心筋梗塞の発症を防ぐ効果があります。

「家族性高コレステロール血症」といった遺伝的に悪玉コレステロール値が高くなりやすい体質の人、スタチンの効果が薄い人、糖尿病や狭心症、心筋梗塞と診断された人に対して使用されることが多いです。

症状が進行している場合には、薬物療法によって一刻も早く症状を抑える判断がされる可能性が高いですが、様々な薬と同様、スタチンを使用した場合にも副作用が現れる人もいるということも覚えておきましょう。

また物理的に狭くなった血管を広げるために、カテーテル治療やバイパス手術が行われることもあります。

血液の流れが悪い場合に、血液をサラサラにすることを目的として抗血小板薬が使用されることもあります。

当院の診察時間・受付方法について

いたや内科クリニックでは、動脈硬化疾患に関連する血糖値、HbA1c、ABIといった数値の即日検査が可能です。

診療時間は、平日の月〜金曜日が9:00〜12:00と14:00〜18:00、土曜日は9:00〜14:00、水曜、日曜、祝日休診となっています。

当院について詳しく知りたい方は、こちらの公式ホームページも合わせてご参照ください。

動脈硬化疾患の治療法は?その検査方法も紹介|まとめ

以下が今回のまとめとなります。

  • 動脈硬化疾患は「狭くなる」か「硬くなる」という2タイプがある
  • 食事療法、運動療法で改善が見られなかった場合は薬物療法が行われる
  • 血管を広げるためのカテーテル・バイパス手術が行われることもある

なお手術について詳しく知りたい方は、狭心症の治療法2つ「カテーテル治療」「バイパス手術」徹底解説もあわせてご覧ください。