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循環器内科

脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?

2023.03.08

脳の病気は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血と様々なものがあり、一命を取り止めたとしても後遺症が残る危険性が高いです。回復させることはもちろん、後遺症を残さないために一刻も早い治療が必要となります。この記事では、脳の病気の一つである脳梗塞を発症するとどんな症状が起きるのか、またその原因や治療法について紹介します。

【目次】
脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|はじめに
脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|脳梗塞を発症した場合の症状は?
脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|何が原因で脳梗塞になるの?
脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|脳梗塞の検査方法と治療法は?
脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|まとめ

脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|はじめに

データのある2021年の日本人の死因の多くは、がんや心臓の病気全般を含む心疾患が多くを占めていますが、老衰を除きそれらに続くのが脳血管疾患となっています。

脳血管疾患と聞くとピンとこないかもしれませんが、脳の血管に異常を起こして発症する病気はまとめて「脳卒中」と呼ばれます。

脳卒中には脳出血やくも膜下出血も含まれますが、その中で特に多いのが今回紹介する脳梗塞です。なお、脳梗塞によって血管が破れると、脳出血やくも膜下出血に繋がる可能性があります。

また死因の多くを占めている心疾患と同じく、脳卒中は動脈硬化が原因となって発症することがあったり、心疾患が元で脳の血管に異常を来すこともあるので、これらの病気は関連性があると言えます。

この記事では、血栓ができることで脳の血管をつまらせてしまう症状である脳梗塞の症状や原因、治療方法について紹介します。

どの病気でもそうですが、脳に関しては特に後遺症が残らないように一刻も早い発見、治療が重要となってきます。そのため、たとえ今は健康であっても、今回の記事をきっかけに脳梗塞に関する知識を身につけておくことをおすすめします。

今回は主に脳梗塞に焦点を当てて紹介するため、脳卒中全般について知りたい方は「脳卒中」等の記事もあわせてご覧ください。

脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|脳梗塞を発症した場合の症状は?

かつて脳梗塞は後遺症が残る可能性の高い病気とされてきましたが、少しずつ治療も進歩してきており、早期発見・適切な早期治療を行うことで後遺症を最小限に留める、あるいは後遺症が出ない状態に導くことも可能となってきています。

早期発見をするためには脳梗塞によって起こる様々な症状を、あらかじめ把握しておく必要があるため、まずは症状について紹介しておきます。

症状は大きく運動障害、言語障害、感覚障害、視覚障害とその他に分けられます。

運動障害は、例えば体の一方に力が入らなくなる、動かなくなる、食事中に箸などを落としやすくなる、つまづきやすくなる、顔の表情が左右非対称になるといった症状が挙げられます。

言語障害は、話したい言葉が出てこない運動性失語や、言葉の意味が分からなくなる感覚性失語、呂律が回らなくなるといった症状が挙げられます。

感覚障害は、手足の片側だけ痺れる、感覚がなくなる・鈍くなるといった症状が挙げられます。

視覚障害は、ものが二重に見える、視野が狭くなる・半分かけるといった症状が挙げられます。

その他の症状としては、急にめまいがする、頭痛や嘔吐がする、体のバランスが取れなくなるとった症状が現れる場合があります。

なお、これらの症状をセルフチェックするための「FASTチェック」というものがありますが、「FAST」は「FACE(顔)」「ARM(腕)」「SPEECH(言語)」「TIME(時間)」の頭文字を表しています。

顔に関しては、笑顔などの口角が上がる表情を作り、片方の頬に力が入らない状態、歪みが出る状態がないかを確かめます。

腕は、掌を上にした状態で肩の高さまで上げて目を閉じ、そのまま5秒程キープできるかを確かめます。症状が現れている場合は腕が下がったり、掌が内側になります。

言語は、普段通りに喋ることができるかを確かめます。言葉が出てこなかったり、呂律が回らなかったりという症状があるときは要注意です。

時間についてはチェック項目ではなく、上記3ついずれかの症状がある場合は脳梗塞の可能性があるためすぐに救急車を呼んでくださいということを表しています。

また、脳梗塞の過程ではTIA(一過性脳虚血発作)と言う症状が現れることがあります。これは脳の血管が詰まるもののすぐに血流が戻るという状況が発生したためで、一時的に脳梗塞と同じような症状が現れるものの数分で治ることがほとんどです。

TIAを発症した場合は本格的に脳梗塞になる危険性があるため、軽視せずに早い段階で病院の診断を受けましょう。

FASTについては「脳卒中の初期症状(FAST)とは?」にもまとめられていたので、あわせてご覧ください。

脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|何が原因で脳梗塞になるの?

脳梗塞は、特に高血圧の人に発症することが多い傾向にあります。

他にも糖尿病や脂質異常症、心房細動、不整脈等の心疾患を患っている人、喫煙・飲酒の習慣がある人、運動不足、偏った食生活を送っている人で発症する可能性が高く、これらは動脈硬化にも繋がる危険因子となっています。

動脈硬化は悪玉コレステロール等によって血管が狭く硬くなったり、脆くなったりして血栓ができて血流を悪くしてしまう状態で、脳を含めた全身に十分な栄養や酸素を送れなくなります。

そのような状態になることで、心臓に関しては心疾患、脳に関しては脳梗塞が起こりやすい状態となります。

なお、脳梗塞の状態は3つのタイプがあるので、以下に紹介します。

ラクナ梗塞

高血圧が主な原因となるタイプで、脳の深い部分にある細い血管を詰まらせてしまった小さな脳梗塞です。小さいとは言っても決して軽度というわけではなく、進行具合によっては治療後も麻痺が残ることもあるタイプです。

アテローム脳梗塞

主に動脈硬化が原因で、太い血管や頚動脈を詰まらせてしまうタイプです。高血圧、高脂血症、糖尿病を患っている人に発症しやすい脳梗塞と言えます。

心原性脳塞栓症

心臓には全身に血液を送るポンプの役割がありますが、その心臓における心房細動、心臓弁膜症といった不整脈や、心筋梗塞といった病気があると心臓の中に血栓ができ、それを脳の血管に送ってしまう場合があります。

この血栓によって脳の血管が閉塞してしまった状態です。心原性脳塞栓症では血栓が大きくダメージを受ける範囲も広い傾向にあります。原因の一つとなる心房細動は高齢になるほど発症率が高くなるため、高齢者がなりやすい脳梗塞です。

こちらのサイトでは「発症機序による脳梗塞の分類」として脳梗塞を解説していました。あわせてご覧ください。

脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|脳梗塞の検査方法と治療法は?

脳梗塞においては段階的な治療が行われ、一般的にその段階を急性期・回復期・慢性期の3つに分けて考えます。

急性期は発症から2週間までが該当し、そのうち発症から8時間以内に血流を回復することが重要となります。

患者が運ばれてきたらCT検査やMRI検査を行い、脳梗塞が起こっている部位や種類を特定します。なお早期の場合はCTで特定できない場合があり、その際はMRI検査に移ります。

他にも、MRA(磁気共鳴血管造影)によって脳の血管の状態を立体的に検査する場合もあります。

その後、発症から4.5時間以内に経静脈血栓溶解療法(t-PA治療)を実施します。血栓を溶かして閉塞状態を解消する方法で、この治療を受けた人の4割程度が後遺症を残すことなく回復したという臨床実験もあります。

ただし4.5時間以上経過している場合は血管が脆くなってこの薬を投与することでの出血の恐れがあるため使用できなくなる他、過去に頭蓋内出血を発症したことがある人、脳出血の可能性が高い人も使用できません。

t-PA治療での改善が見られない場合は、カテーテルでの血管内治療に切り替えられ、8時間以内での血流再開を目指します。

カテーテルでの治療には、カテーテル内にウロキナーゼという薬を注入して血栓を溶かす「局所線溶治療」や、先端の針金部分で血栓をからめて取る「メルシーリトリーバー」、ポンプで血栓を吸い取る「ペナンブラシステム」等があります。

メルシーリトリーバーとペナンブラシステムは機械的血栓回収療法とも呼ばれ、早期であれば大きな血管が詰まっている場合にも効果が期待できます。

脳梗塞では、体力の低下や認知機能の低下を防ぐために治療後の早い段階でリハビリを開始することも重要であり、発症から48時間以内に始めることが推奨されています。

なお急性期は生命維持が最優先されるので、ベッドの上でのストレッチや車椅子の乗り降りといった比較的動作の少ないリハビリが行われることが多いです。

次の回復期は発症から3〜6か月となり、この間は更に普段の生活に近いリハビリが行われることになります。磁気・電気刺激療法やロボットリハビリが行われる場合もあります。

慢性期は再発を予防する期間であり、自宅での生活や社会復帰が可能な段階となります。日常生活を送りながらも通院してリハビリを続けたり、薬物療法を行ったり、生活習慣の改善を行ったりする必要があります。

当院の診察時間・受付方法について

いたや内科クリニックは、循環器内科・動脈硬化性疾患に専門性があり、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞といった動脈硬化疾患を長く診療してきた専門医による診察が可能です。

脈波検査、心臓超音波検査、頸動脈超音波、ホルター心電図などの検査が可能な他、動脈硬化の促進因子である睡眠時無呼吸症候群や糖尿病についてもCPAP治療などの積極的な治療介入を行っています。

診療時間は、平日の月〜金曜日が9:00〜12:00と14:00〜18:00、土曜日は9:00〜14:00、水曜、日曜、祝日休診となっています。

診療科目は、内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、糖尿病内科、アレルギー内科、予防接種、生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群、自費診療、往診応需です。

当院について詳しく知りたい方は、こちらの公式ホームページも合わせてご参照ください。

脳梗塞とはどんな病?なってしまった場合の治療法は?|まとめ

以下が今回のまとめとなります。

  • 脳梗塞は脳卒中の一つである
  • 早期発見にはFASTチェックが重要
  • 発症から8時間以内に血流を回復されなければならない
  • リハビリは発症から48時間以内に開始することが推奨されている

治療後のリハビリについて詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。