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健康診断で肝機能の数値が高いと言われたら?AST・ALT・γ-GTPを東中野の内科が解説
2026.08.20
健診でAST・ALT・γ-GTPが高いと言われた方へ。3つの数値がそれぞれ何を測っているのか、AST/ALT比が語ること、γ-GTPが上がる3つの入口を分子レベルから解説します。日本肝臓学会の奈良宣言2023(ALT 30超で受診)とFIB-4 indexによる線維化の評価、生活での改善策まで、東中野の内科クリニックが説明します。
【目次】
東中野の内科クリニックでも、健診結果を持って来られる方が増えています
3つの数値は、それぞれ違うものを見ています
AST・ALTは「アミノ基を運ぶ酵素」です
なぜALTのほうが「肝臓の数値」なのか
壊れ方の深さで、出方が変わります
AST/ALT比(De Ritis比)が語ること
γ-GTPは「グルタチオンをほどく門番」です
γ-GTPが上がる3つの入口
3つの数値だけでは足りません — 一緒に見る項目
「ALTが30を超えたら受診を」— 奈良宣言2023
肝機能の数値が上がる主な原因
何をすれば下がるのか
東中野で受診するかどうかの目安と検査の流れ
よくあるご質問
まとめ
参考文献
東中野の内科クリニックでも、健診結果を持って来られる方が増えています
「毎年ちょっと高いと言われるけれど、去年も何もなかったから」。「お酒は飲まないのに、γ-GTPだけ高いと言われた」。「ALTが35だった。基準は30だから、5だけオーバー。これくらい大丈夫ですよね」。東中野のクリニックでも、健診結果を手にこうしたご相談をよく受けます。
結論から申し上げると、「少しだけ高い」を何年も放置することが、いちばん避けたい経過です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が出たときには線維化がかなり進んでいることがあります。そして数値の高さと、病気の進み具合は比例しません。ALTが200の急性肝炎は数週間で治ることがある一方、ALTが40台のまま10年続いた脂肪肝が肝硬変に進むこともあります。
この記事では、東中野の内科クリニックとして、AST・ALT・γ-GTPが体の中で何をしている酵素なのか、なぜ上がるのか、どこから先が本当に危ないのかを、正確にお伝えします。酵素の反応式から始めて、細胞のどこにあるのか、なぜ比率が意味を持つのかまで図を使って解説し、最後に検査の流れと生活の見直し方をご案内します。
結論を先にお伝えすると、大切なポイントは3つです。①ALTは肝臓にほぼ限られる酵素で、30 U/Lを超えたら一度は調べる。②AST/ALTの「比」を見ると原因の見当がつく。③本当に大事なのは数値の高さではなく「線維化が進んでいるか」。この3つを押さえておけば、結果票の読み方が変わります。
3つの数値は、それぞれ違うものを見ています
「肝機能」とひとくくりにされますが、AST・ALT・γ-GTPは意味も、上がる理由も別々です。
まず、はっきりさせておきたいことがあります。この3つは、肝臓の「働き」を測っている検査ではありません。肝臓の細胞が壊れて中身が血液に漏れ出た量、あるいは細胞が酵素を増産した量を見ているだけです。
肝臓が本当に働けているかどうかは、アルブミン(肝臓がつくるタンパク)、プロトロンビン時間(凝固因子の合成能)、総ビリルビン(処理と排泄)といった別の項目で判断します。ですから「ALTが高い=肝臓が働いていない」ではありません。「肝臓の細胞が壊れ続けている」というサインとして受け取ってください。
なお、結果表にある基準範囲は測定法や施設によって少しずつ違います。おおむねAST・ALTは30 U/L前後、γ-GTPは男性50 U/L前後・女性はもう少し低め、が目安として使われていますが、自分の結果票に印刷されている基準範囲を基準にしてください。
AST・ALTは「アミノ基を運ぶ酵素」です
この2つは、正式にはアミノ基転移酵素(トランスアミナーゼ)といいます。アミノ酸の目印であるアミノ基(-NH₂)を、別の分子へ受け渡す反応を担当しています。
ALTは、アラニンのアミノ基をα-ケトグルタル酸へ渡し、ピルビン酸とグルタミン酸をつくります。ASTは、アスパラギン酸のアミノ基を渡してオキサロ酢酸とグルタミン酸をつくります。どちらも補酵素としてピリドキサールリン酸(ビタミンB6の活性型)を必要とします。この点はあとで重要になります。
できあがったピルビン酸とオキサロ酢酸は、糖をつくる材料です。絶食したとき、体はアミノ酸からブドウ糖をつくります(糖新生)。ALTとASTは、その入口でアミノ酸を「糖の材料」に変換する役目を担っています。
この反応は肝臓の中心的な仕事なので、肝細胞にはこの2つの酵素がたっぷり貯めこまれています。細胞が壊れれば、それが一気に血液へ流れ出す。つまり血液中のALT・ASTは、壊れた肝細胞の量を間接的に映した数字なのです(Kim WR, et al. Serum activity of alanine aminotransferase (ALT) as an indicator of health and disease. Hepatology. 2008)。
なぜALTのほうが「肝臓の数値」なのか
同じように細胞から漏れ出る酵素なのに、ALTが「肝臓の数値」と呼ばれるのはなぜか。答えは体内での分布の違いにあります。
ASTは、肝臓のほかに心筋・骨格筋・赤血球・腎臓にも豊富に含まれます。ですから、激しい運動をした翌日、筋肉を痛めたとき、採血のときに赤血球が壊れた(溶血した)ときにも上がります。「ASTだけが高くALTは正常」というパターンで、まず筋肉と溶血を疑うのはこのためです。この場合はCK(クレアチンキナーゼ)という筋肉の酵素を一緒に測ると、はっきりします(Nathwani RA, et al. Serum alanine aminotransferase in skeletal muscle diseases. Hepatology. 2005)。
いっぽうALTは、ほぼ肝臓にしかありません。だからALTが上がっているときは、原則として肝臓で何かが起きています。ALTが「肝臓の数値」と呼ばれるのは、この特異性の高さゆえです。
γ-GTPは実は腎臓にもっとも多く含まれますが、腎臓のγ-GTPは尿へ出ていくため血液には現れません。その結果、血中のγ-GTPは事実上、肝臓と胆道からのものだけを見ていることになります。
壊れ方の深さで、出方が変わります
もうひとつ、細胞の中でどこにあるかが効いてきます。
ALTは細胞質にしかありません。いっぽうASTは細胞質とミトコンドリアの両方にあり、しかも約8割はミトコンドリア型です。
ですから、軽い障害(細胞膜の透過性が上がっただけ)では、細胞質にあるALTと細胞質型ASTが同じくらい漏れ出ます。ALTのほうが肝細胞内の濃度が高いため、結果としてALT優位になります。脂肪肝や慢性肝炎がこのパターンです。
深い障害(細胞が壊死してミトコンドリアまで壊れる)になると、ミトコンドリア型ASTが放出され、AST優位に転じます。
そして長く続いた障害では、線維化が進んで壊れる肝細胞そのものが減っていきます。皮肉なことに、肝硬変になると数値がかえって下がることがあります。
ここが誤解されやすいところです。「数値が下がったから治った」とはかぎりません。肝炎が落ち着いて下がったのか、壊れる細胞が減って下がったのかは、数値だけでは区別できません。だからこそ、血小板数・アルブミン・画像検査を合わせて見る必要があります。
AST/ALT比(De Ritis比)が語ること
ASTをALTで割った値をDe Ritis比といいます。1950年代にイタリアの医師デ・リティスが提唱したもので、いまも現役で使われています。
ALT優位(比が1未満)
もっとも多いのは脂肪肝です。次いで慢性ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害。腹部エコー、体重・腹囲の推移、B型・C型肝炎ウイルスの検査、内服薬とサプリメントの確認を行います。
AST優位(比が2を超える)
アルコール性肝障害を強く疑います。理由は2つあります。
ひとつは、アルコールがミトコンドリアを傷めるため、ミトコンドリア型のASTが出やすくなること。もうひとつは、慢性的な飲酒でビタミンB6(ピリドキサールリン酸)が不足することです。先ほど「補酵素として必要」と書きましたが、ALTのほうがこの補酵素をより強く必要とするため、B6が足りないとALTの活性だけが相対的に落ちます。この2つが重なって、比が2を超えます。
飲酒が原因かどうかを確かめる、いちばん確実な方法は2〜4週間しっかりお酒をやめてみて、数値が下がるかを見ることです。γ-GTPは半減期が2〜3週間なので、禁酒すれば目に見えて下がります。
両方が数百以上
これは急性肝炎の可能性があります。ウイルス性、薬剤性、虚血性(ショックや心不全のあと)、自己免疫性など。早めの受診が必要です。とくに黄疸が出ている、意識がぼんやりする、という場合は急を要します。
γ-GTPは「グルタチオンをほどく門番」です
γ-GTP(正式にはγ-グルタミルトランスフェラーゼ、γ-GT)は、AST・ALTとは性格がまったく違う酵素です。
この酵素は細胞膜の外側に張りついています。そして、グルタチオンという物質をほどく仕事をしています。
グルタチオンは、細胞を酸化ストレスや毒物から守る体内でもっとも重要な抗酸化物質です。グルタミン酸・システイン・グリシンの3つがつながった構造をしています。
細胞は、外に出たグルタチオンを丸ごと取りこむことができません。そこでγ-GTPが細胞の外でγ-グルタミル結合を切り、システインを含む断片にしてから回収します。回収したシステインで、細胞はまたグルタチオンをつくり直す。γ-GTPは、このリサイクルの入口に立つ門番なのです(Whitfield JB. Gamma glutamyl transferase. Crit Rev Clin Lab Sci. 2001)。
ここから、γ-GTPが他の2つと決定的に違う点が出てきます。細胞が壊れていなくても、上がることがある。解毒のためにグルタチオンをたくさん使う状況になると、細胞はγ-GTPそのものを増産するからです(酵素誘導)。
γ-GTPが上がる3つの入口
「γ-GTPが高い=お酒」と考えられがちですが、飲まない方でも上がります。
①酵素誘導。アルコール、抗てんかん薬、一部の睡眠薬・向精神薬などで、肝細胞が酵素を増やします。細胞は壊れていないので、AST・ALTは正常なままということもあります。「γ-GTPだけが高い」がよく起こるのはこれが理由です。
②胆汁うっ滞。胆石、胆管の狭窄、腫瘍、薬剤性の胆汁うっ滞などで、胆汁の流れが滞ると、胆管側の細胞膜にあるγ-GTPが血液中へ押し出されます。この場合はALPも一緒に上がるのが特徴で、腹痛・発熱・黄疸を伴うこともあります。
③脂肪肝・代謝異常。内臓脂肪型の肥満、脂肪肝、糖尿病、脂質異常症でも上がります。酸化ストレスの高まりとの関連が指摘されています。
当院で「お酒を飲まないのにγ-GTPが高い」というご相談を受けたときに確認するのは、この3つです。①腹部エコーで脂肪肝がないか、②ALPも一緒に上がっていないか、③薬・サプリメント・プロテイン・漢方薬に原因がないか。
3つの数値だけでは足りません — 一緒に見る項目
肝臓の状態は、「傷み」「詰まり」「働き」「線維化」の4つの角度から見ます。AST・ALT・γ-GTPが見ているのは、このうち「傷み」と「詰まり」の一部だけです。
とくに強調しておきたいのが血小板です。肝臓の線維化が進むと、脾臓が大きくなって血小板を壊し、また肝臓でつくられるトロンボポエチン(血小板をつくらせるホルモン)が減るため、血小板数がじわじわ下がります。
これは肝硬変が完成する前から起こる変化です。ALTが正常に戻っていても、血小板が20万/μLを切ってきたら線維化を疑って評価します。健診結果を見るとき、肝機能の欄だけでなく、血算の欄も一緒に見てください。
もうひとつ、B型・C型肝炎ウイルスの検査(HBs抗原・HCV抗体)は、一生に一度は必ず受けておくべき検査です。自覚症状がないまま20〜30年かけて進行し、肝硬変・肝がんに至るためです。「調べたことがない」という方は、この機会にご相談ください。
「ALTが30を超えたら受診を」— 奈良宣言2023
2023年6月、日本肝臓学会が奈良で開かれた総会で、一般の方に向けたはっきりした呼びかけを出しました。「健診でALTが30 U/Lを超えていたら、かかりつけ医を受診してください」。これが奈良宣言2023です(日本肝臓学会「奈良宣言2023」)。
なぜ30なのか。理由は、「基準範囲内」とされてきた領域にも、進行しうる脂肪肝が多数隠れていたからです。従来の基準では男性で40〜50 U/Lまでを正常としていた施設もありましたが、その範囲にいる方のなかに、線維化が進んでいる方が確実にいました。拾い上げの網を細かくしたのが奈良宣言です。
数値の高さより、線維化のリスク
受診したあと、私たちが評価するのは「線維化が進んでいるか」です。肝臓の病気の予後を決めるのは、炎症の強さではなく線維化のステージであることが、長期追跡の研究で示されています(Angulo P, et al. Liver Fibrosis, but No Other Histologic Features, Is Associated With Long-term Outcomes of Patients With Nonalcoholic Fatty Liver Disease. Gastroenterology. 2015)。
そこで使うのがFIB-4 indexです。計算式はこうです。
FIB-4 =(年齢 × AST)÷(血小板数[10⁹/L] × √ALT)
健診の結果票にある4つの数字だけで計算できます。1.3未満なら線維化のリスクは低く、2.67を超えると高リスクとされます(年齢や病態によって解釈は変わります)。奈良宣言では、心血管代謝リスクのある方でFIB-4が1.3以上、または血小板が20万/μL未満なら、専門医療機関への紹介が推奨されています。
ここで気づいていただきたいのは、年齢が式の分子にあることです。同じALT 35でも、40歳の方と65歳の方ではリスクの重みが違います。「ALTが少し高いだけ」に見えても、年齢が高く血小板が低ければ、値は跳ね上がります。
肝機能の数値が上がる主な原因
頻度の高い順に並べます。ひとつと決めつけず、重なっていることも多いと考えてください。脂肪肝とアルコール、脂肪肝とC型肝炎、といった組み合わせは珍しくありません。
もっとも多いのは脂肪肝 — そして名前が変わりました
2023年、国際的な合意によって、これまでNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれてきた病気の名称がMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)に変わりました。進行型のNASHもMASHになりました(Rinella ME, et al. A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. J Hepatol. 2023)。
名前が変わったのには理由があります。旧来の名称は「アルコールのせいではない」という引き算で定義されていました。しかし実際には、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧といった代謝の異常があることこそが本質です。そこで、代謝の異常があって脂肪肝がある状態という足し算の定義に改めたのです。
もうひとつ、お酒も飲み、代謝異常もあるという方が現実には多くいます。新しい分類では、この重なりをMetALDとして位置づけました。「アルコールか、それ以外か」という二者択一をやめたのが、この改定のいちばん大事な点です。
日本の健診受診者では、脂肪肝はおよそ3人に1人に見つかるとされています。ごくありふれた所見ですが、その一部は確実に線維化へ進みます。「よくあることだから」と流さないでください。
薬とサプリメントは、必ず確認します
薬剤性肝障害は処方薬だけの話ではありません。市販の解熱鎮痛薬、健康食品、プロテイン、漢方薬、いわゆる「肝臓によい」とされるサプリメントでも起こります。数か月以内に新しく飲み始めたものがないかを必ず振り返ってください。中止して2〜4週間で下がれば、それが原因だった可能性が高くなります。
何をすれば下がるのか
脂肪肝が原因の場合、生活の見直しではっきり改善します。そして目標は「何キロやせるか」ではなく「何%減らすか」です。
体重の「%」で考える
肝生検で確かめられた研究では、体重を5%減らすと肝臓の脂肪が減り、7%減らすと肝炎の所見(MASH)が改善し、10%減らすと線維化まで改善することが示されています(Vilar-Gomez E, et al. Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis. Gastroenterology. 2015)。
70kgの方なら、まず3.5kg。これは決して非現実的な目標ではありません。逆に「10kgやせないと意味がない」と思ってしまうと、始める前にあきらめてしまいます。
運動は、体重が変わらなくても効きます
週150分の中等度の有酸素運動(早歩き、自転車など)で、体重が変わらなくても肝臓の脂肪は減ります。筋トレの併用も有効です。通勤で一駅分歩く、エレベーターを階段にする、といったところから始めてください。
飲むものを見直す
意外に見落とされるのが果糖です。清涼飲料水、果汁飲料、菓子パンなどに含まれる果糖は、肝臓で直接脂肪に変えられます。「食事は気をつけているのに」という方の盲点になりがちです。
アルコールは「何杯」ではなく「純アルコール量(g)」で把握してください。計算は「量(mL)× 度数(%)÷ 100 × 0.8」です。
- ビール500mL(5%)= 20g
- 日本酒1合180mL(15%)= 約22g
- 焼酎(25%)100mL= 20g
- ワイン200mL(12%)= 約19g
- ウイスキーダブル60mL(43%)= 約21g
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年)では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、1日あたり男性40g以上・女性20g以上が示されています。ただしこれは「ここまでなら安全」という許容量ではありません(厚生労働省「飲酒ガイドライン作成検討会」)。
肝機能の数値が上がっている方には、まず2〜4週間の禁酒をご提案することが多いです。これは我慢比べではなく、「お酒がどれくらい効いているか」を確かめる検査だとお考えください。
東中野で受診するかどうかの目安と検査の流れ
まず受診をお勧めする場合
- ALTが30 U/Lを超えている(奈良宣言2023の基準)
- AST・ALT・γ-GTPのいずれかが基準を超えた状態が2年以上続いている
- 血小板が20万/μL未満である
- B型・C型肝炎ウイルスの検査を一度も受けたことがない
- お酒を飲まないのにγ-GTPが高い
- 去年より数値が明らかに上がった
お急ぎいただきたいサイン
- 白目や皮膚が黄色い(黄疸)
- 尿が濃い茶色になった、便が白っぽい
- 右の肋骨の下が痛む、押すと痛い
- 足のむくみ、お腹の張り
- 吐血、黒いタール状の便
- 強いだるさと食欲不振が続く
- AST・ALTが数百以上と指摘された
当院での検査の流れ
- 問診:飲酒量(純アルコール量で)、体重の推移、内服薬・サプリメント、家族歴、輸血歴、健診結果の経年変化を確認します。
- 採血:AST・ALT・γ-GTP・ALP・ビリルビン・アルブミン・血小板に加えて、HBs抗原・HCV抗体、血糖・HbA1c・脂質。必要に応じて抗核抗体、フェリチン、甲状腺機能、CK。
- 腹部エコー:脂肪肝の有無と程度、肝臓の形、胆石や胆管の拡張、脾臓の大きさを確認します。痛みのない検査です。
- FIB-4 indexの計算:採血結果から線維化のリスクを推定します。
- 方針の相談:生活の見直しで経過を見るか、追加の検査が必要か、専門医療機関へのご紹介が必要かをご相談します。
初診の流れは初診の方へ、アクセスはアクセス・案内をご覧ください。当院はJR総武線 東中野駅 西口より徒歩2分、都営大江戸線 東中野駅 A2出口より徒歩2分です。消化器内科、健康診断についてもご案内しています。
受診の際は、必ず健診結果の原本(できれば過去数年分)をお持ちください。「去年からどう変わったか」が、いちばん多くを語ります。
関連する記事として【健康診断で肝機能が引っかかった】精密検査を受けるべき数値と受診方法を解説もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q. 健診の前日に飲酒したせいで高く出た、ということはありますか?
A. γ-GTPは影響を受けます。ただし、飲酒量が多くない方が1回飲んだくらいで大きくは動きません。むしろ「毎年この時期だけ低い」ほうを疑ってください。健診前だけ節酒すると、ふだんの状態が見えなくなります。ASTとALTは、前日の飲酒で大きく動くことは通常ありません。
Q. 激しい運動をした後の採血で、数値が高く出ることはありますか?
A. あります。とくにASTとCKが上がります。ALTも軽度に上がることがあります。筋トレやマラソンのあと数日は影響が残るので、採血の2〜3日前は激しい運動を避けていただくのが理想です。すでに高く出てしまった場合は、運動を控えて再検査すれば区別できます。
Q. ALTが35でした。「軽度異常」なら様子を見てよいですか?
A. 一度は原因を調べることをお勧めします。奈良宣言2023が「30を超えたら受診を」と呼びかけたのは、まさにこの帯域に進行しうる脂肪肝が隠れているからです。とくにご年齢が高い方、血小板が低めの方、糖尿病や脂質異常症のある方は、FIB-4を計算する価値があります。1回調べて問題なければ、あとは年1回の健診でかまいません。
Q. 肝臓によいサプリメントを飲めば下がりますか?
A. お勧めしていません。肝機能の数値を下げる効果が確立したサプリメントはなく、逆にサプリメント自体が薬剤性肝障害の原因になることがあります。当院でも、サプリを中止しただけで数値が正常化した方がいらっしゃいます。効くと確かめられているのは、体重を減らすことと運動、そして原因を取り除くことです。
Q. γ-GTPが200を超えていました。お酒をやめればどのくらいで下がりますか?
A. γ-GTPの半減期は2〜3週間です。ですから、飲酒が主因であれば2〜4週間の禁酒で目に見えて下がります。逆に、しっかりやめても下がらない場合は、胆道系の問題や脂肪肝、薬の影響を考えます。「下がるか下がらないか」自体が、診断のための情報になります。
Q. 太っていないのに脂肪肝と言われました。なぜですか?
A. やせ型の脂肪肝は珍しくありません。日本人を含むアジア人では、BMIが正常でも内臓脂肪が多い方、筋肉量が少ない方、急激な減量を繰り返した方に見られます。果糖の多い飲料、運動不足、睡眠不足も関係します。「太っていないから脂肪肝ではない」とは言えません。
Q. 家族に肝臓の病気の人がいます。何か調べておくべきですか?
A. B型肝炎は母子感染・家族内感染がありうるため、HBs抗原の確認をお勧めします。また、まれですがヘモクロマトーシス(鉄がたまる病気)やウィルソン病(銅がたまる病気)など遺伝性の肝疾患もあります。ご家族の診断名が分かれば、診察時にお伝えください。
まとめ
- AST・ALT・γ-GTPは、肝臓の「働き」ではなく「傷み方」を見る指標です。働きを見るのはアルブミン・プロトロンビン時間・ビリルビン。
- AST・ALTはアミノ基転移酵素。肝細胞にたっぷり貯めこまれており、細胞が壊れると血液へ流れ出ます。
- ALTはほぼ肝臓にしかないため肝特異性が高い。ASTは心筋・骨格筋・赤血球にもあり、運動や溶血でも上がります。
- ALTは細胞質のみ、ASTは8割がミトコンドリア型。この違いが、障害の深さによる比の変化を生みます。
- AST/ALT比が2を超えたらアルコール性を強く疑います。ミトコンドリア障害とビタミンB6不足が理由です。
- γ-GTPはグルタチオンをほどく門番。細胞が壊れていなくても、酵素誘導で上がります。禁酒で2〜3週間で下がります。
- 血小板が20万/μLを切ってきたら線維化を疑います。肝機能の欄だけでなく血算も見てください。
- ALTが30 U/Lを超えたら一度は受診を(奈良宣言2023)。数値の高さより線維化(FIB-4 index)が予後を決めます。
- 脂肪肝は体重5%減で脂肪、7%減で肝炎、10%減で線維化が改善します。目標はキロではなくパーセント。
- B型・C型肝炎ウイルスの検査は、一生に一度は必ず。
肝臓は、かなり傷んでも文句を言いません。だから健診の数値は、肝臓が出せる数少ない声です。「毎年ちょっと高い」を10年続けるより、一度きちんと調べて安心するほうが、はるかに楽です。健診結果をお持ちのうえ、遠慮なくご相談ください。東中野の内科クリニックとして、必要な検査と、必要のない薬を出さない診療を心がけています。
いたや内科クリニック TEL 03-3366-3300
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査値の解釈や治療については、必ず医師にご相談ください。
参考文献
- 一般社団法人 日本肝臓学会「奈良宣言2023」(医療関係者向け)
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会「患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023」
- 厚生労働省「飲酒ガイドライン作成検討会」(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)
- Kim WR, Flamm SL, Di Bisceglie AM, Bodenheimer HC. Serum activity of alanine aminotransferase (ALT) as an indicator of health and disease. Hepatology. 2008.
- Prati D, et al. Updated definitions of healthy ranges for serum alanine aminotransferase levels. Ann Intern Med. 2002.
- Nathwani RA, Pais S, Reynolds TB, Kaplowitz N. Serum alanine aminotransferase in skeletal muscle diseases. Hepatology. 2005.
- Whitfield JB. Gamma glutamyl transferase. Crit Rev Clin Lab Sci. 2001.
- Sterling RK, et al. Development of a simple noninvasive index to predict significant fibrosis in patients with HIV/HCV coinfection (FIB-4). Hepatology. 2006.
- Angulo P, et al. Liver Fibrosis, but No Other Histologic Features, Is Associated With Long-term Outcomes of Patients With Nonalcoholic Fatty Liver Disease. Gastroenterology. 2015.
- Hagström H, et al. Fibrosis stage but not NASH predicts mortality and time to development of severe liver disease in biopsy-proven NAFLD. J Hepatol. 2017.
- Vilar-Gomez E, et al. Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis. Gastroenterology. 2015.
- Rinella ME, et al. A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. J Hepatol. 2023.
- Lee TH, et al. Serum aminotransferase activity and mortality risk in a United States community. Hepatology. 2008.
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